第8話 驚きすぎると動けない

「あー、お嬢ちゃん、こっちにおいで」

剣を持った赤い髪の人が私に向かっておいでおいでとしている。


〈ディア、どうしよう、どうしたらいい?〉

剣なんて見たこと無いからパニックになってディアに抱きつく。怖いけど目を離すのも怖いから赤髪の人を見つめる。


〈大丈夫だ、守ると言ったろう。後ろにいなさい〉

守るように体を前に出して、その場で座ってしまう。私もしゃがんでディアに抱きつく。


5人はちょっと困惑ぎみ。


「スノーケーニヒが守っているように見えますよ。座ったし、敵意ないんじゃないですか?」

青色の髪の人が剣を下ろして、赤髪の人に言う。


「あの子ずっとスノーケーニヒに抱きついてるよ、リーダー。契約者じゃない?普通じゃあり得ないけど。」

茶髪の1人がそう言って少し前に出てくる。

そっくりなもう1人が静かにみてくる。


「何もしない。近づいてもいいか?話がしたいだけだ」

剣をしまって両手を上げた赤髪の人がそう言ってきた。とりあえず襲われることは無さそう。


〈全員武器をしまってくれ。この子が怖がる。〉

ディアが言うと、全員持っていた物をしまってくれた。


「言葉が通じるならよかったです。そっちに行ってもいいですか?」

青髪さんが聞いてくる。いいよね?


〈ディア、大丈夫。お話してみよう。〉

ギュッとしてディアを見る。


〈その方が良さそうだな。〉


5人が近づいてきた。ちょっと怖いかも。みんな背が大きい。


〈リン、切り株に乗ろう。草の上に座るよりいいだろう〉

そう言って立ち上がり、鼻でツンツンとほっぺをつつかれる。大人しく切り株に座ってディアに背中から包まれる。


ディアさんはスフィンクス状態です。

もふもふソファーの出来上がり。


5人が切り株の近くまできて座った。よかった、目線が同じくらいだから怖さ半減。


「武器を向けてしまって申し訳ない。君が襲われているのかと思ってしまった。」

赤髪さんが頭をさげて謝ってくれた。優しい人みたい。


「大丈夫です。心配してくれてありがとうございます。」

ディアが尻尾で足をポンポンしてくれる。とっても落ち着く。


「まずは自己紹介な。俺はガイト。紅嵐の盾(こうらんのたて)のリーダーだ。よろしくな!」

赤髪さんはガイトさんと言うらしい。元気な人。


「次は私ですね。ナリアルです。よろしくお願いします。」

敬語の青髪さん。優しそうだけどちょっと怖そう。なんでだろ。


「レイだ。」

体の大っきなシルバー髪さんがしゃべった。お名前だけ。寡黙な人なのね。


「俺はカルダ!双子の兄。よろしくな。」

茶髪の1人。やんちゃ坊主感がある。やっぱり双子さん、似てる。


「僕はアルダです。双子の弟だよ、よろしくね。」

優しそうなふんわりした人。苦労してそう。


「リンです。この子はディア。契約してます。」

さっきカルダさんが契約者かもって言ってたからちゃんと伝える。この子は優しいよ。


〈私はリンに害がなければ何もしない。〉

そう言ってお鼻でほっぺをぷにぷに。

それ気に入ったの?


「なんでこんな森の奥にいるんだ?家もなにもないだろう、こんなところに。」

ガイトさんからの質問。聞かれて当たり前だけど、どうしよう。転生者ってこと言って良いのかな。


〈ディア、どうしよ。本当のこと言うべき?〉

頼れるディアさんに助けを求める。


〈1つ聞きたい。お前たちはこの子をどうしようと思っている?〉

ディアから5人への質問だった。


「俺たちは上位冒険者だ。それなりの力がある。俺たちの元で保護したいと思っている。」

ガイトさんがみんなを見ると、全員頷いてる。


〈リン、事実を話せ。こいつらは大丈夫だ。〉

なにか感じ取ったのか、反応をみてからそう言われた。ディアがそう言うなら大丈夫なのかも。


「朝起きたらここにいました。元々住んでいたのは地球という異世界?です。」


5人全員かたまってしまった。どうしよう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る