第5話 守るべき存在
___ディア視点___
先ほどまでニコニコと話をしていた少女が、今はもう眠ってしまった。まだ幼く見える不思議な少女を眺める。
スノーケーニヒの名をもつ私に、敵となるものはそう多くない。森の中で仲間たちと過ごしていたが、つまらなくなってふらふら歩き回っていた。
ふと何かに誘われて行ったそこに、リンがいた。
ここは[迷わせの森]のそのまた奥、普通の人間が来るような所ではない。足を踏み入れたら方向感覚を失い、出口が分からなくなると言われる森だ。
実際は木の魔物たちが面白がって目印をズラしたり、木の本数を変えているだけなのだが。人間には気付きにくいのだろう。
それにしても、不思議な少女だ。
温かい魔力がリンから流れてくる。オーラと言うべきか、雰囲気と言うべきか。柔らかい温もりが心地よい。
〈お前はどれだけの経験をしたのだ。なぜ耐え続けられた。なぜ人を憎まない。なぜ苦しめてきた存在を許せる。〉
聞かされたリンの過去の話を思い出し、そうつぶやく。
どう考えても耐性が強すぎる。相当つらくひどい経験をしたのなら、憎しみや怒りを覚えておかしくない。それなのに、リンからはそんな感情が一切流れてこない。
あるのは開放されたことと、私と出会えたことへの喜び。そして今後への不安だろう。
嬉しくも心配になってしまう。
森を出て人の街まで行こう。そして、人として守ってくれる存在を見つけねばならん。私が守るのはもちろんだが、人の子には必要なものがある。そしてリンには人間としての生活も必要だろう。
なにかあれば全力で守ればいい。
〈リン、今はゆっくりおやすみ。〉
小さく丸まって寝ているリンを少し眺め、一緒に休むことにする。気配察知は可能だ。危険はないだろう。
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