大根と林檎のシャキシャキサラダ

第5話：僕、精一杯林檎さんを守ります。

「林檎さんは・・・林檎さんは僕の彼女です」

「僕の大事な恋人です！！」

「なに言ってんの、こいつ」

「いいかげんなこと言うなよ、おまえ？」

「林檎がおまえみたいなやつ・・・」

「本当だから・・・」

「この子の言ったこと本当だから、この子は私の彼氏だし恋人」

「またあ、うそだろ？・・・こんなガキ・・・」

「俺を追い返すために、口裏わせてるだけだよな」

「なわけないでしょ・・・私はもう、この子と付き合ってるの」

「だからあなたの出る幕はないし、今後、私とヨリを戻すなんてこと

ないの・・・分かった？」

「って林檎さんが言ってるんだからもう彼女につきまとうな」

「なんだとクソ生意気な、こいつ」

「やめなさいよ、好行・・・相手は高校生だよ」

「うるさい！！、ふたりして俺をコケにしやがって」

そう言って林檎さんの元カレは僕を突き飛ばそうとした。

僕はすかさず、身を引くと、元カレ手を取って、手首をひねるとそのまま

地面に押し倒した。

「あ、いてててて・・・痛いって・・・放せよバカやろう」

「いいですけど、二度と林檎さんに近づかないって約束してください」

「じゃないと、女性に暴力ふるったって警察呼びますよ」

「くそが！！」

「分かった・・・林檎には近づかないから放してくれ」

「絶対ですよ」

「分かったよ、絶対、近づかない」

僕は元カレに林檎さんには近づかないことを約束させて放してやった。

元カレは自分の手を押さえながら、恨めしそうに僕と林檎さんを

交互に見ながら、急いで夜の街に消えていった。

「新ちゃん・・・びっくり」

「あ、いけなかったでしょうか？」

「いけなくないって・・・助けてくれてありがとう」

「あの、どさくさに紛れて林檎さんのこと彼女だとか恋人だとか言っちゃって

すいません」

「え？・・・なんで謝るの？」

「私、新ちゃんの彼女だし恋人だよ・・・間違ってないけど・・・」

「あ〜・・・そうなんですか？・・・そうか・・・そうだよな」

「え？、違うの？」

「いやいやいや・・・林檎さんは僕の彼女で恋人です、間違いないです」

「でしょ？」

「それにしても新ちゃん強いね」

「ああ、つい最近まで近所の合気道の道場に通ってましたから」

「え？、そうなんだ・・・」

「僕がいかにも頼りなさそうな男に見えるから意外だったんでしょ？」

「意外も意外・・・っていい意味でね」

「じゃ〜私には頼れるボディーガードの彼がついてるんだ」

「頼れるかどうかは分かんないですけど・・・僕、精一杯林檎さんを守ります」

「ありがとう」

「本当は、めちゃ心配だったんです」

「林檎さんの元カレみたいな人が現れて・・・また元の鞘に戻っちゃうんじゃ

ないかって・・・林檎さんを信じてましたけど・・・それでも・・・」

「そんなことないから・・・大丈夫だよ」

「あいつには、１ミリも未練ないから、安心して」

そう言って林檎さんは僕を優しくハグしてくれた。

しばらくして林檎さんが、サッと僕から離れたので、どうしたのかなと

思って彼女の視線を追うと僕の後ろで、父ちゃんが腰に手をあてて、

気まずそうに立ってこっちを見ていた。

「店の前でラブシーンはよせ」

「ふたりとも大丈夫なのか？」

「大丈夫、もう終わったから」

「お父さん・・・ご迷惑おかけしました」

「なんてことないから・・・気にしなくていいよ林檎ちゃん」

「新ちゃん・・・じゃ〜私、今日は帰るね・・・」

「ひとりで大丈夫ですか・・・僕、心配だな」

「遅くならなきゃ彼女、送ってっていいぞ」

父ちゃんがぶっきらぼうに言った。

「本当に？」

「おう」

「え？、悪いよ、新ちゃん」

「心配です・・・ひとりで帰るなんて現彼氏として許しません」

「はいはい、分かりました、じゃ〜送ってって」

「あのよう、明日、学校に間に合うように帰ってこいよ、って本当は言って

やりたいけど、まだ未成年だからな、おまえ」

「あと半年は無理だな」

「それ、どういう意味だよ父ちゃん」

「そういう意味だよ」

つづく。