第3話:母親としての思惑。
結局、林檎さんは僕を受け入れてくれて付き合うことになった。
と言っても、僕は車を持ってる訳じゃなし、どこかへルンルンでドライブに
行けるわけでもない。
普段とさして変わらない。
まあお互い会社と学校が休みの時に会ってデートするくらい。
あと平日の夜、林檎さんが店に飲みに来てくていた。
前は時々店に来てたけど、今はほぼ毎日のように来ている。
他の客と分け隔てなく接してるつもりでも、どうしても林檎さん優先で
愛想よくしてしまう、僕。
しかたないよね、林檎さんは僕にとって特別の人だから・・・。
林檎さんは、いつもほろ酔いで、ご機嫌で帰っていく。
林檎さんが泥酔したのを見たのは彼女が大失恋したあの夜だけ・・・。
僕は店の外まで林檎さんを見送ると、林檎さんはいつでもハグしてくれて
ほっぺにチューをしてくれる。
クチビルはダメなの?って思ってしまうけど、まだ言えない。
そういう日々が続いて、僕たちにそれ以上の進展があるわけでもなく、
時々ほんとに僕たち付き合ってるのかってさて思う時がある。
僕が高校卒業して社会人にならないと思うようにはならないのかな。
親のスネをかじってる身の上じゃ、自由もきかない。
せめて林檎さんのマンションに出入りできたらって思うけど、まだそこまでは
図々しくお邪魔できない。
だいいち林檎さんは付き合ってもいいって言ってくれたけど僕は林檎さんから
愛されてるのかな?
まあ、いきなり僕を愛してなんて無理なのかもしれないけど・・・。
僕が一方的に自分の気持ちを押し付けただけで、とりあえず付き合って
あげてもいいかなって思ってるだけなのかも・・・。
悶々とした気持ちの日々の中、僕は母ちゃんから話があるからって店の
座敷に呼ばれた。
「話ってなに?」
「あのさ・・・最近、林檎さん毎日にように店に来てるわよね」
「だね」
「あんたと林檎さん最近やたら親しくない? 」
「なんで?・・そんなことないけど、常連さんとして接してるだけだよ」
「自分で気づいてないかもしれないけど、こっちから見てると、あんた
林檎さんと話してる時は、表情も目の色も違ってるよ」
「なに盗み見してんだよ?」
「あんた林檎さんと何かあった?」
「・・・・・・」
「僕たち、付き合ってる・・・」
「うそ!!、まさか、いくらなんでもそれはないわって思ってたけど・・・ 」
「いつから?」
「もう付き合い始めて一ヶ月にはなる」
「あんた、何考えてるのよ」
「ちょっと綺麗なおネエさんだからって浮かれてるだけじゃないの?」
「すぐに覚めちゃうんじゃないの?」
「林檎さんもよくあんたと付き合うこと承諾したわね」
「それに向こうはずいぶんな歳上でしょう」
「林檎さんとあんたいくつ離れてるの?」
「13才・・・」
「13才?・・・・そんなに歳が離れて・・・こんな高校生相手に林檎さんも
なに考えてるのかしらね」
「林檎さんは悪くない」
「僕が無理やり付き合ってって言ったんだ・・・林檎さんは、いい人だから
断りきれなかっただけだよ」
「林檎さんも母ちゃんと同じように歳のことを言ったよ」
「だけど、それのなにがいけないんだよ」
「歳が離れてるってだけで恋愛できないのか?」
「世の中には歳の差カップルなんていくらでもいるだろ?」
「そりゃまあ、そうだけど・・・」
「にしても、あんたまだ高校生でしょ」
「高校生だって言うのも偏見だよ」
「じゃ〜たとえば、相手が林檎さんじゃなく同級生の子だったらよかったのかよ」
「そう言われると・・・返す言葉ないけど・・・」
「いいよ、母ちゃんに許してもらおうとは思わないから」
「はやとちりしない・・・」
「わたしが反対したくらいで林檎さんとの、お付き合いを辞めるって言う
くらいなら、あんたたちはそこまでの関係ってことだからね・・・」
「あんたの意思は堅そうね」
「僕は林檎さんを諦めないからね」
「分かった・・・私もそこまで意固地じゃないから」
「あんたたちのことそっとしといてあげるわ・・・」
「たぶん反対したら、あんたのことだから家を出て行くって言いかねないからね」
「林檎さんはいい人そうだし、彼女としては問題ないでしょ 」
「まあ、せいぜい彼女からフられないようがんばりなさい」
林檎さんと付き合い始めた時から、僕たちの関係が母ちゃんにバレたら
全面的に反対されるって思ってた・・・それは覚悟してたんだ。
でも以外に理解があるんだなって思うとホッとした。
父ちゃんは・・・反対とも賛成とも言わなかった。
ただ一言。
「おまえを信じてるからな」
って言ってくれた。
つづく。
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