第2話:じゃ〜私と付き合ってみる?。

「あ、あの・・・あの、僕が好きな人って・・・あの」

「り、林檎さんです」


突発的かつ衝撃的告白だった。


林檎さんは僕が何を言ってるのかすぐには理解できなかったのか

えっ?って感じで、また椅子に座り直した。


しばらく沈黙が続いた。


「新ちゃん・・・ごめん、もう時間ないから・・・」

「今日は帰って・・・」

「今日はって言うか・・・私、お仕事が終わったら新ちゃんに、お仕事

終わったよって連絡するから悪いけど、またこのカフェまで来てくれる?」


「はい分かりました・・・」


「君の気持ちを無視したままじゃ、やっぱりダメだからね」

「話はその時にしよ」


「じゃ〜ね、行くね・・・スマホ届けてくれてありがとう」

「気をつけて帰って・・・」


そう言って林檎さんは会社に戻って行った。

後ろ姿も綺麗だ・・・。


林檎さんが去ったあと、僕は自分の想いを彼女に告ってしまったことに

ちょっと複雑な気持ちでいた。

あんなこと唐突に言って、きっと林檎さんも戸惑っただろうな。


バカだよな、僕・・・あ、林檎さん気分壊してもう店に来ないかもしれない。

どうしよう・・・。


仕事が引けてから話をしようって言ったけど、正直林檎さんの答えが怖かった。

だいいち林檎さんが、俺なんか相手にするわけないのに・・・。


告っちゃったものはしょうがない・・・もう後戻りはできないんだ。

なんとしても林檎さんを説得しなきゃ。

僕の中で、林檎さんから「ごめんなさい」って言われるんじゃかいかって

思いが強くなっていった。


学校へ戻っても先生が言ってることも耳に入らない。

下校時も上の空でチャリを漕いで店に帰った・・・帰り道が記憶にない。


店に帰ってから開店準備をしていたら、僕のスマホに林檎さんから

《今お仕事終わったら、カフェにきて》ってLINEが入って来た。


「悪い、父ちゃん、母ちゃんちょっと用事ができた・・・出かけなきゃ

いけないから、少しだけ抜ける、ごめん」

「なるべ早く用事済ませて帰ってくるから」

「それから父ちゃんスッパーカブ貸して・・・」


「おう、乗ってけ」


僕はオヤジのスッパーカブを借りて「ひっそり佇むコーヒー屋さん」まで走った。


カフェに到着して店内に入ると、奥の席に林檎さんが、すでに来ていて僕に気が

つくと手招きした。


その時点でぼくは、もう心臓バクバクで林檎さんの向かいの席に座った。


「お待たせしました」


ぼくが座ると同時に林檎さんが言った。


「昼間の話だけどお・・・」

「新ちゃん・・・本気?」

「本気で言ったの?、好きな人は私だって?


《いらっしゃいませ》


とそこに、ウェイトレスさんが注文を取りに来た。

僕は適当に飲み物を頼んだ。

ウェイトレスさんが向こうに行くと林檎さんはまた話を続けた。


「私のこといつからそう思ってたの?」

「いつからって言うか・・最初、男の人と一緒に店に来た時からです」


「ああ、そうか・・・あれが最初か・・・」


「あの一緒に来てた男の人と、別れたんですか?」


「そのことはいい・・・話したくないから・・・」


「あ、ごめんなさい」


「で?、私のどこがいいの?」


「そりゃ綺麗だし、優しそうだし、魅力的だし、林檎さんみたいな素敵な人と

お付き合いできたらいいなって思ってます」


「素敵な人?・・・私が?」

「いい?君は私の見た目だけで、好きになってるんだよ」

「私のこと何も知らないでしょ?」


「そんなこと・・・好きになった人のこと、最初っからすべて知ってる人なんか

いないでしょ?」

付き合ってみないと分かんないです・・・」


「まあね、たしかにね・・・」


「新ちゃん、いくつだっけ?」


「17です」


「17か・・・・私と13個も違うじゃない」


「それがいけないんでしょうか?」


「いけないって言うか・・・おばさんと高校生じゃ釣り合わないでしょ」


「林檎さんは、おばさんじゃありません!!」


「声が大きい・・・なに、ムキになってるの?」


「すいません・・・」


「じゃあ、おばさんじゃないなら、なんて言うの?」


「綺麗なおネエさん・・・」


「おばさんでも、おネエさんでもどっちしても私の方がかなり歳上だよ」

「同級生の女子とか・・・もっといい子が周りにいるでしょ」


そこにまたウェイトレスがやってきて僕が注文した飲み物を置いていった。


「クラスに好きな女子なんかいません」

「いたら林檎さんに告ってないです」


「あ、そうか・・・言ってることが、いちいちもっともだね」


「あの・・・林檎さんは僕のこと嫌いですか?」


「嫌いじゃないよ・・・新ちゃんはいい子だって思ってる」

「一応、お店で君のことはずっと見て来たからね・・・嫌いじゃない」


「でもさ、私が君の想いを断るってことは考えなかったの?」


「そんなこと考える間も無く告ってました」

「って言うか・・・え?ダメなんですか?」


「・・・て言ったら?・・・」


「僕のことは嫌いとか迷惑なら諦めますけど・・・諦めたくないですけど」


「さっきも言ったけど、歳が離れ過ぎてるでしょ」


「それがダメって理由でしょうか?」

「まあ理由の一つではあるね」


「歳が離れ過ぎてるからって理由で断られるのは納得できません」

「僕のことが嫌いならしかたないですけど・・・」


「ほんとに私でいいの?」


「はい、林檎さんじゃなきゃダメなんです」

「林檎さんとお付き合いできないなら死んだ方がましです」


「死んだ方がって・・・若いね・・・」

「死んだ方がましって気持ちは分かんないでもないかな」

「でも死んじゃったら私と付き合えないよ」


「え?・・・それは?・・・それって?、あの・・・おっけ〜ってことですか?」

「もしかして・・・」


「そうだね・・・」

「君の言うように歳の差なんて関係ないのかもね」


「まじですか?、やった〜」


「新ちゃんは素直だね・・・誰かと大違いだわ」


「誰かって?、誰ですか?」


「私を無慈悲にフった人(男)」

「あ、ごめん、余計なことだった・・・じゃ〜私と付き合ってみる?」


「はい、よろしくお願いします」


ってことで僕は林檎さんと、お付き合いできることになった。( ´ ▽ ` )ノ


林檎さんが僕と付き合うことに同意した理由のひとつに、彼女は失恋の

痛手から立ち直れていなかったため誰でもいいからそばにいて癒してほしかった。


そのことはのちに林檎さんがそう漏らしてた。


僕みたいな頼りない若造でも、いないよりはマシかもしれない。

林檎さんの支えになってあげたい・・・僕は心からそう思った。


どう思われても僕はいいんだ・・・林檎さんのそばにいられさえすれば・・・。


つづく。

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