大根と林檎のシャキシャキサラダ

猫野 尻尾

第1話:僕の好きな人は林檎さんです。

僕には歳上の彼女がいる。

年齢差13才。

僕の名前は「大根 新一おおね しんいち」歳は17才、現在高校二年生。

苗字が苗字だから、僕のあだ名は「ダイコン」


彼女の名前は「高畑 林檎たかはた りんご」歳は30才、外資系商社勤務。


僕んちの両親は居酒屋を営んでいる。

店の名前も、ひらがなで「だいこん」

僕は学校から帰ってくると店を手伝っていて、その店に時々やってくる客の

ひとりが林檎さんだった。


彼女の身長は見た目160センチくらいですらっとしたスタイル。

髪型はおかっぱボブで大きな目の愛くるしい人。

唇の向かって右下にホクロがある。

それが彼女をよりセクシーに見せていた。


林檎さんは最初はもちろんお客様・・・僕とつながる要素など皆無。


いつもなら、ほどよくお酒を飲んで世間話をしてほろ酔いで帰っていく彼女。


でもその日は違った。

溺れるほど酒を飲んで酔いつぶれてボロボロ。


気分が悪いっていうので僕が奥の座敷に林檎さんを連れて行って

背中をさすったり、冷やしたタオルを持ってきておでこやほほを冷やしたり

甲斐甲斐しく介抱してあげた。


当然だろうけど、最初は彼女の眼中に僕は存在してなかったと思う。

居酒屋ので働いてる普通の人のよさそうな高校生。

どう考えたって高校生なんか恋愛対象にはならないだろうから・・・。

社交辞令的に親しくしてくれていたんだと思う。


でも僕はそうはいかななかった。

僕はひそかに林檎さんに憧れていたし好きだと言う想いを抱いていた。

そして僕の林檎さんに対する想いは日ごとに膨らんでいった。


あとになって林檎さんから聞いたんだけど、あの日、酒に酔いつぶれた日、

林檎さんは大失恋をしていて、一時は死のうかとまで思ってたらしい。

だから、酒を浴びるように飲み、僕に介抱されることになった。

失恋の傷は彼女を孤独にさせ寂しさから立ち直れずにいた。


で、おまけにその日、林檎さんは店にスマホを忘れていった。

僕は林檎さんが勤めてる会社の住所を知っていたので昼休み自転車を

漕いで林檎さんの会社に届けてあげた。


どこの部署にいるかまでは把握してなかったので、受付のおネエさんに

言って林檎さんを呼び出してもらった。

しばらくしてエレベーターから降りてきて林檎さんは、すぐに僕を見つけて、

微笑みながら近寄ってくると言った。


「あら、新ちゃん、どうしたの?」

「私に用って?」


「あの・・・店にスマホ忘れてたので届けにきました」


「え?・・スマホ届けてくれたの?」

「よかった・・・どこかで無くしたって思ってたの」


「ありがとうね、新ちゃん」


「いえ、いいんです」


会社で見る林檎さんはオフィススーツを身にまとってとっても素敵だった。


「時間あるよね・・・ちょとそこのカフェで話そ」

「スマホ届けてくれたお礼にコーヒーおごってあげる」


カフェの名前は「ひっそり佇むコーヒー屋さん」

あれ、どこかで聞いたことあるような店の名前。


「こうして日中に新ちゃんと会うのはじめてだね」


「はい・・・昼間の林檎さんは・・・あの素敵だし綺麗です」


「あら、お世辞・・・でも夜はダメなの?私」


「ああ、ごめんなさい・・・そういう意味じゃなくて」

「夜も綺麗ですけど、昼間も綺麗です」


「いいのよ、無理しなくて・・・」


「あの・・・こんなこと聞いちゃって怒られちゃうかもしれませんけど・・・」

「・・・失恋・・・もう大丈夫なんですか?」


「うん・・・たぶんね・・・」

「心配してくれてありがとう」

「いつまでも過去を引きづってちゃいけないと思うんだけどね」


「あの時、私が酔いつぶれた時、介抱してくれてありがとう」

「新ちゃんの優しさが身にしみたよ」

「かっこ悪いとこ見せちゃったね」


「いえ、そんなこと・・・」


「うん・・・まあ大丈夫だから、私」


って林檎さんが言ったけど、どことなく彼女の表情が寂しそうに感じた。


しばらく沈黙があって


「君は?真ちゃん、彼女とかいるの?」


「いません」


「あら・・・そんなにイケメンさんなのに?」

「じゃ〜同級生の女子は見る目がないのかな?」


「僕、同級生の女子とかじゃなく他に好きな人がいますから・・・」

「そうなの?」

「あら、彼女いないって言ったってことは、その人のことは片思い?」


「そんなものです・・・今のところ」

「気持ち告白してないですから・・・」


「そう、がんばってね」

「あ、そろそろ私、行かなきゃ」

「真ちゃんスマホ届けてくれてありがとう」

「じゃ〜ねまたお店に行くからね」


そう言って彼女は立ち上がろうとした。


立ち上がろうとした林檎さんを見て、このまま彼女を行かせたらチャンスは

なくなると思った僕は、ほぼ衝動的に言ってしまった。


「あ、あの・・・あの、僕が好きな人って・・・あの」

「り、林檎さんです」


突発的かつ衝撃的告白だった。


林檎さんは僕が何を言ってるのかすぐには理解できなかったのか

えっ?って感じで、また椅子に座り直した。


つづく。


※大根と林檎のシャキシャキサラダのレシピ。

 大根は皮をむいてピーラーで剥く。

 りんごは櫛形3mm厚さに切ってゆずの汁をかけて色止めする。

 大根は塩少々降って軽く絞る。

 ボウルに大根、りんご、オリーブオイル、塩、胡椒、はちみつ、

 白ワインビネガー を加えてさっくりと混ぜる。

 器に盛って、パセリのみじん切りを散らし、胡椒をかける。

 ボウルに、大根、りんご、ドレッシング、大根の葉を入れる。

 皿に盛り付け、あればゆずの皮を擦って散らす。

 以上、大根と林檎のシャキシャキサラダのレシピでした。



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