English Lesson
一瞬の静寂を打ち破るかのようにクラスがどっと沸いた。涙を流している者もいれば、「おなか痛い、おなか痛い」と悶絶する者もいる。この笑いの渦中にいる中3の男子生徒に何があったのか……。
路上のあちこちには雪が残り、底冷えする寒さが続いていた。県立高校入試まで残すところ十日、試験の成否が合否に直結することを誰もがわかっている。それまで受験を他人事のように思っていた生徒もさすがに尻に火がついて人がちがったように勉強に打ち込んでいた。教師は教師で、教え子が合格に一歩でも半歩でも近づけるようにと最後の追い込みに余念がない。
英語の授業が終わる間際にその"事件"は起きた。試験の直前は入試を模した実践演習を繰り返す。まちがいが多い問題から順繰り解説し、一通り重要と思われるポイントの説明し終えたとき、時計に目をやると授業の終わりまであと五分を余していた。
そこで生徒に声をかけた。
「まだ解決できない問題を抱えてる人いる?」
すると、二人の生徒が手を上げた。そのうちの一人がそれまで一度も質問をしたことのない男子生徒だった。
「おう、まず君からだ。で、どの問題?」
透かさず教師は彼に声をかけた。
「問5のウの並べ替え問題がわかりません。」
「ああ、あの問題か。よし、まずどう解答したか教えてくれ。」
どこでどう躓いているのか分からないかぎり腑に落ちるような説明にならない。
「えーっと、52431です。」
一瞬教師の表情が曇った。
「悪いけど、そうじゃない。英語で言ってくれないか?」
時間が迫っていることもあって少しぶっきらぼうだった。しかもこの教師は上背もあり、強面。中三の男子とはいえ、舞い上がるには十分だった。
「はい。えーっと、えーっと……」
「ファイブ、トゥー、フォー、スリー、ワン。」
少し舌を巻いた感じでそう答えた。
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