第8話 大企業の罠

 転職活動中に私自身に求められていることはなんだったか、最近になってわかった気がする。それは自分が何にパフォーマンスを発揮できるかという点である。文字ではわかっていても、理解するには時間がかかってしまった。


 その原因は自分の価値に気づいていなかったからである。前職での経験はいつしか単なる知識へと変わり、少し業界を知っている人に成り下がってしまったのだ。

物流での日々はオペレーションではなく仲介役を担っていた。なので私がアピールすべきなのは調整力だったはずである。その上で知識を加えた事柄を発信できればもっと上手く行ったかもしれない。


 ここで大企業の弊害が顔を出す。彼らの目標は新人を現場で通用する人材に育て上げることであったが、この教育方針は多くの若手を混乱させた。何故なら、自分たちの素質があるにもかかわらず、現場での専門性を高めるということは会社の期待に反比例するようにギャップが増していってしまうからである。やりたいことと出来ることのバランスが崩れ麻痺してしまい、その結果自分は何を売り込めば良いのかわからなくなってしまうのだ。

だから実績と自分の得意とする点が結び付かずに暗中模索を繰り返してしまうのである。


 呑み友の1人がよく「30までは経験した者の勝ち。いや、今の世の中は35までかもしれない。」と言っていた。その年までは誰もが右往左往する。その過程でバランスを作っていくのが人生における勉強なのだという。時間をかけ、場数を踏んで行くしかないということなのだろう。


 そう考えると「第二新卒」という言葉は都合よく作られた言葉のように感じられた。人の流動性を国家が肯定し、様々な経験を積ませて人間性を養わせようとするつもりなのだろう。そんな回りくどいことをして無責任だな、と思うのは他責思考だろうか。

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