【BOG実況】おい、重くないか……?
【BOG実況】おい、重くないか……?
「……どうもみなさん、お久しぶりです。感情的なポタクさんです」
・こんにちは! 寝起きですか?
・テンションひっく
・配信者にあるまじき声のトーンで草
「いや、ヒバリの回想でだいぶメンタルやられて続き見るのが怖くなって……でも……でも、この話を最後まで見ないと気が済まないって言うか……ヒバリちゃんがしっかり幸せになるところを最後まで見届けないと納得いかないっていうか! 怖いけど続きを見ずにはいられないっていうか!」
・辛れえよな……
・オタクの幸せな悲鳴
・※このポタクは鬱展開が苦手です
「でも、BOGなら最終的に面白いストーリーにしてくれるって信じてるので! このまま終わるわけない! というわけで、メインストーリーの続きをやっていきますよ!」
早速メインストーリーの続きを再生する。
主人公とヒバリの会話で終わった前回とは打って変わって、今回はヴィクトリア視点のようだ。
◇
廃墟と化したオフィス街──どこか見覚えのある道路を歩き、金髪の少女は少しだけ思考に耽る。
ヴィクトリア・フォン・レオノーラは本気で自分のことを皇女などと思っているわけではない。
全てはなりきり。ただの嘘。
そのはずだった。
あの日以来、嘘と本当の境界が曖昧だ。
口から出まかせを言っていただけなのに、いつの間にか自分自身がそれを嘘だと認識できなくなっていることがある。
私は本当にこの国で生まれたのか? 昔の家のことは忘れた。親の顔も思い出せない。
厄災の日以前にどんな生活をしていたのかひどく曖昧だ。
思考が自らの嘘に飲み込まれる。自分が自分でなくなっていく。
ただ、これでいい。纏姫とは虚勢に傾くほどに力を発揮できるものだ。
「──ようやく、我が復讐が実を結ぶ」
ぽつりとつぶやき、拳を握りしめる。
まるで何かのリミッターを外すように、彼女は眼帯を外した。
普段晒している碧眼とは対照的な、赤い瞳。
かつて見せた時は、カラーコンタクトでも入れているような安っぽい赤色のはずだった。
しかし今は違う。ルビーの如く輝く赤は爛々と輝き、瞳の奥の憎悪を際立たせる。
間違いなく、それは
「待っててねひーちゃん。──この身が滅びようとも、私が神を殺してみせる」
人の身に余る偉業には犠牲がつきものだ。
そのことを、ヴィクトリアは本能的に知っていた。
◇
「あれ、雲行きがおかしい……ヒバリちゃん救済回どこ? 甘々イチャイチャ回は?」
・ないです(無慈悲)
・個別ストーリーを読め
ヴィクトリアの独白が終わると、画面が切り替わる。
立ち絵とメッセージウィンドウのみの画面から、アニメーションへ。
真っ先に映ったのは、隻眼を激しい憎悪に燃やすヴィクトリアの姿だった。
彼女が見上げた先には、堂々たる佇まいで君臨する厄神の姿があった。
伝承に語られるドラゴンのような姿だ。
地面に零れ落ちた血のようにどす黒い皮膚。漆黒の翼。生気のない瞳。
かつてヴィクトリアの故郷を襲い多くの人を殺し──誰か、大事な人を殺した仇だ。
◇
「──風よ、我が身に宿りて力を見せろ」
敵はこちらに気づいていない。先制攻撃の絶好のチャンスだ。
どの道彼女に残された時間はそれほど多くない。
ヴィクトリアの全身を風が覆う。
発生した強風が彼女の背中を押し、人体には不可能な加速を可能にする。
「ッハアアアアアア!」
風の後押しを受けた彼女が吠える。
その掌には、黒々と燃える炎があった。
──それは、まるで彼女の中に燃え滾る復讐の炎のようだった。
「憎悪の炎よ! 今こそ力を解き放ち我が仇敵を討ち滅ぼさん!」
突き出された炎は爆ぜ、無防備な厄神の身体へと襲い掛かる。
「■■■■■■!」
聞くに堪えないおぞましい悲鳴が上がる。
確実に効いている。彼女の魂を籠めた一撃は、神とまで呼ばれた敵に確かに通用していた。
しかしヴィクトリアはそれで満足せず、すぐに次の攻撃を仕掛ける。
高々と片手を上げて、彼女は堂々と宣言した。
「宙より降り立つ破壊の化身よ、地を穿つ星よ。今ここに顕れ暴虐を尽くせ!」
遥か上空の曇り空を切り裂いて、それは現れた。
厄神の頭上に赤く燃える質量が出現する。
隕石、と呼ばれるもののようだった。
燃え盛るそれは、厄神の巨体にも匹敵するほどだ。
優に半径10mはある。
地表に到達すれば衝撃で都市一つを崩壊させる岩石は、ただ一つの敵めがけて一直線に墜落してきた。
「……■■■!」
厄神が吠え、その顎を宙より放たれた弾丸に向けた。
口腔からチリチリと火の粉が舞う。
次の瞬間、眩い熱線が隕石目掛けて放たれた。
火炎放射と隕石がぶつかり合う。
轟音が無人の都心に響き渡り、衝撃波がオフィスビルの窓ガラスを破壊した。
衝突の結果──ブレスにより抉れた隕石は、それでも軌道を変えずに龍の体へと迫った。
「■■■!」
再びの悲鳴。威力を削がれた弾丸は、厄神の体を穿つに至らなかったようだ。
めり込んだ石の表面からどす黒い血がドクドクと溢れ出す。
厄神は殺気だった目で敵対者を睥睨する。
神を相手に大打撃を与えたヴィクトリアは──血を吐きながらうずくまっていた。
力の使いすぎによる体の拒絶反応だ。
元々ヴィクトリアの精神は『虚構』に傾き過ぎていた。
普段は力の使い方をセーブして進行を抑えていた
右目だけでなく、左目すらも薄っすらと赤に変わっていく。
この先に待ち受けるのは発狂死のみ。
それが分かっていても、ヴィクトリアは攻撃をやめない。
右手を地面につけ、魔法を詠唱する。
「ッ……ぅ、海より出づる怪物よ、暴力機構よ、……ゴホッ」
詠唱の途中で咳き込んだヴィクトリアが再び血を吐く。
巨大な魔法を放たんとしていたエネルギーが霧散した。
怒り狂った厄神が直ちに反撃する。
巨体が身を翻すと、トゲの生えた尻尾がまるでムチのようにしなり、ヴィクトリアに襲い掛かる。
「ッ……」
それは凄まじい威力となった。
ゴム弾のように吹き飛ばされたヴィクトリアは、数10m吹き飛ばされた後マンションの壁面に激突して墜落した。
崩れ落ちたヴィクトリアの体は血塗れで、両目は虚ろ。
それでも尚厄神に手を伸ばさんとした彼女は、また大きく血を吐いた。
◇
「この鬱ゲーふざけやがってええええええ!」
・台パンの音聞こえて草
・魂の悲鳴
・※このポタクはハピエン厨です
「クソ、なんでこのゲームのヒロインはみんな傷つくんだ……あんまりだよ……こんなのってないよ……」
・ポタクさんが魔女堕ちしちゃう……
・相変わらず感情移入してますね
「グラフィックが綺麗な分だけ負傷が痛々しくて……このゲームどこに力入れてんだ。誰だこれ作ったの」
・絶対女の子の曇り顔が性癖の社員がいるぞ
・俺たちの課金からできてます
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます