第26話 才能
その日の執筆も、進行状況が悪いまま、俺は机の
「…………」
ふと、机の
――
そのようなタイトルの小説が、俺の意識を引き寄せる。執筆がキリのいいところまで終わった時か、
……めくり
「読むのは楽しみだが、
と、
――
――作家を辞めた方が良い、という意見をたくさん耳に入れながらも、作家活動をすることには
――だから、
――そう思うのだが。
その万が一を想像したら、読むのに
たかが小説を読んだだけで、人生に
だが、されど小説だ。フィクションの持つ力は、意外に大きい。
――小説を読んで筆を握ったんだから、小説を読んで筆を折る可能性も、
そんな僅かな不安を抱えて、俺はゆっくりと、その小説に向き合ってみる。
話の内容は、美冬の言った通りだった。
確かに俺を
美冬が面白いと言っただけあって、しっかりと面白いなという印象のまま、時間の流れと共に、本の残りページも減っていく。
『もし仮に、才能をお金で買うことが可能だとすれば、キミはどうする?』
才能を買うか、買わないかという、質問だった。
主人公は、こう答えるのだ。
『俺は、買わないよ。それを買って、
なるほど。
一種の
才能を買えても、俺は買わない……か。素晴らしい考えだ。
でもたぶん、俺なら買う。
買ってしまう。
――才能を買えたら、面白い小説、魅力的な小説、個性豊かな小説が書けるのであれば、俺は絶対に買うだろう。これが不正解の回答でも、俺は正解だと思い続ける。
――だって俺は、良い小説を書きたいから。
そう思ってしまうあたり、俺は大した人間ではないのかもしれない。
しかし、それで構わないと思う。
小説家だから、すごい小説を書きたい。それの何が悪いという話なのだった。
俺は、ページをめくり続ける――……。
◇
天才作家が売れるべくして売れて、
その
中学生のときの俺は、
そして現実を知り、一度筆と別れ、そしてまた夢を抱き、再度筆を握るわけだ。
俺は、もしかしたら
実際に小説を
――俺は、ただの卵に過ぎなかった。
と。
そうやって、才能がいかに重要かを知り、そして才能があればと思う。
――俺に才能があれば、どんなに人生は面白くなっていたのだろう?
しかし、才能は持って生まれるものだ。努力で身につけられる
安物と言えば、言い方は悪いが、俺はそう強く感じている。
努力に関しては
努力で手に入れられるものよりは、
だが、そんなことを、ひたすら考えていたところで、才能は
俺は、才能は欲しいが、なぜ欲しいかといえば、それは最高の小説を書きたいからだ。
才能がないのであれば、持っている努力で何とかしなければならない。
だから俺は、小説を書き続ける。
しんどくなっても、筆を握り続ける。
……なんて、スポ
◇
――……。
俺は、ゆっくりと
視界に入るのは、パソコン。キーボード、カーテンの
――そうか。
どうやら俺は、
執筆に難航したまま……。
「今日は、土曜日か……」
俺は、椅子から立ち上がる。
小説制作に苦難を抱えた状態で眠るなんて、最悪だなと思った。
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