第23話 飛ばし過ぎ注意
物語には、
例えば、俺の
俺自身が急展開かな? と思っていても、そのシーンをよく見ると、ありきたりな展開だったりする。読者はそれを読み、もっと驚きやスリル、意外性などの
では、急展開の連続ではどうだろうか?
それも、読む側が楽しめる物語構造とは呼べない。
敵の
そういう、先が読めない話を好む読者が存在するのも事実だが、少数に限られる。それに、簡単には調理ができない
何となく察した人もいると思うが、
「――地面から手を伸ばして、人間の足を掴むのが大好きな
超展開のパターンなのだった。
それも、調理困難なゲテモノを持ってくるタイプの。
足掴み族? どんな文化が生まれ、その民族が誕生したのだろうか? 選挙よりも、そっちの方が気になるわ。
確かに
「タイトルは――足掴み族、選挙出るってよ」
出るな、
彼女は、俺に聞く。
「このアイデア、小説に組み込めそうかな?」
「そう、だな……どうだろうか」
「どうかな……!」
「…………」
な、何だろう?
辻さんのアイデアは、一般感覚を飛ばし過ぎているから、使うのが難しい、という
しかし、期待に
だから、なるだけ俺は言葉を選んで口に出した。
「辻さんのアイデアは、
「なるほど。
「あ、ああ。そうするよ」
とりあえず、
おそらく、そのアイデアを使う時は、来ないと思うが……。
まあ、良いだろう。
――だが、だ。
美冬を
「…………」
いや、分かっている。
辻さんの
勝手に期待して、勝手に失望するなど、そんなお
彼女は、
やはり、この問題は、小説家である俺が何とかしなければならないのだと、思い知らされた。
そんなことを考えていたら、辻さんが俺に話しかける。
「難しそうな顔をしているね……」
「そうか?」
「うん」
「……まあ、大丈夫だ」
「そっか。じゃあ」
「……じゃあ?」
もしかして、まだまだたくさんある訳ではないだろうな?
「私の、まだまだたくさんあるアイデアを紹介するよ」
「……ど、どれくらいあるんだ?」
「スマホにメモをしているんだけど……残り4000文字くらいかな」
――残り4000文字⁉
「睡眠を
「――オールだよ」
寝ていないことを、ドヤ顔で言っている。
……てか。
彼女のぶっ飛んでいるアイデアが、あと4000文字分もあるのか?
しかも、深夜テンションのものも混ざっていそうだ。
「…………」
果たして、俺の聞く耳と、ツッコミの心の声は、その文字分、持つだろうか?
持つ自信は、あまり無い。
彼女のアイデアを耳に入れるのは問題ないのだが、カロリーが高すぎるゆえに、
――あと、時間が……。
残り六日間で、2万文字の小説を完成させなければならない。
4000文字分のアイデア
「色々なアイデアがあるよ。
「物体であれば
「毎回、宅配ボックスに
「まだまだ、アイデアは山のようにあるよ」
と、いきいきとした様子で
――恐ろしい。
どうしたものか……と思った。
そんな時だった。
――トッ、と。
時計を見る。時刻は、16時40分を
「板橋くん……
辻さんには悪いが、これをチャンスだと思い、俺は話に
「そうだな。話し合いは、
「まあ、しょうがないね……また、今度。続きをしようね」
「……そ、そうだな」
さすがに、この短編制作期間は、何かと理由にかこつけて、断ることにしよう。
そんなことを、内心でつぶやいた。
帰宅後、執筆に取り掛かるも、結局良いものは思いつかず、
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