第22話 アイデア
時間は過ぎ去っていき、放課後になる。
クラスメイトが、部活や遊びなど、
二台の机をくっつけ、話し合いの準備を始めた。
お
「じゃあ、始めようか」
「うん。良い小説を書くための作戦会議だね」
「そうだ。物語の構築に必要なアイデアをまとめて、案を取り入れるか取り入れないの検討をしていこう」
俺は、
「まずは、俺が昨日、思いついた案を言うが……」
「うん!」
「過度な期待は
「あのね、
「ん?」
「板橋くんは、私から――
「まあ、それは……」
確かに、彼女の言わんとすることは、正しいのだった。
だが、それでもだ。
やはり、行き過ぎた期待はプレッシャーに変わってしまう、という心境は
だから、
期待の
「…………」
それも、難しい話かもしれない。
彼女の表情を見つめ、そのように感じた。
「後悔されても、責任は
「大丈夫だよ。いたばしこう先生の考えたアイデアってだけで、
「…………分かった。じゃあ残念な反応はされない
「ドンと来ていいよ」
じゃあ、ドンとでもくれば良いか……。
「まず、一つ目だが……」
「うんうん……!」
俺は、いくつかのアイデアを口に並べていった。
その案はどれも、
例えば、
「一人孤独な生活を送る、
とか。
「
「…………」
例えば、
「ゲーマーの主人公がトラックに
とか。
「それも採用」
「………………」
例えば、
「クラスの端っこにいるような陰キャラの主人公が、なぜだか分からないが、学校一の美少女から好意を抱かれており、休み時間の度に話しかけれて、二人はやがて恋人の関係にまで発展していく……という話」
とかとか。
「それも採用。もう全部採用だね」
そして俺は、彼女に対してツッコミを入れる。
「――ちょっと待とうか」
「うん?」
俺は今、いくつかのアイデアを口に出して言った。
そして、分かったことが一つあった。
「今のところ、全てのアイデアが通っているんだが?」
「いたばしこう先生が
「大ありだ」
分かったこと。それは……、
期待を裏切ることを恐れるべきではなかったのだ。
逆だ。
反対意見が出てこない、ファンの
もっとも、それは恐れたところで、解決はできない。
結論。彼女に、このアイデアはどうだろうか? などと相談する行為は、自分が嬉しい気持ちになりたい時だけにした方が良い。なぜなら、高確率で高評価をいただき、
「辻さん、一度考えてほしいんだ」
「何を?」
「今さっき、俺が出した案が、あの二冊を好む
「…………」
辻さんは、しばらく
「私は、面白いっていう自信があるから、大丈夫だよ」
「辻さんは面白いと言って、美冬は何と言うと思う?」
「…………私は、絶対に面白いって言うから、大丈夫だよ」
「…………おーけー」
うん。
ダメだ、信者。
「とりあえず、今出したアイデアは、
たぶん、お
俺だって、自分自身では分かっているのだ。
このようなアイデアを取り入れた短編小説を書いたところで、あの
おそらく、足りていないのはインパクト、驚き、
俺には、まだ何もかもが足りていない。
彼女に認めてもらえるような小説を作るには、まだ何もかも足りていないのだ。
――
だが、絶望ばかりもしていられない。
後ろ向きのままでは、前へ進むことはできないのだ。
俺には、まだ辻さんのアイデアが残っているじゃないか。
「辻さん。よければ辻さんの考えてきたアイデア……というものを聞かせてくれないか?」
「うん、良いよ」
そう言い、彼女は笑みを浮かべる。
「一応、自信はある」
「……ほう」
何とも、心強い。
自信があるアイデア。
それもあの、
残っている希望。
今さっきまでの、信者側辻さんと違って、今の創作側辻さんの背中は、とても大きく感じられた。
「まず、一つ目だけどね」
「ああ」
彼女は、言った。
「――空飛ぶ爆弾が、
「空飛ぶ爆弾……
なんか、ヤバい。
これは、ヤバい。
絶対にヤバい。
「タイトルは――シン・爆弾」
「…………」
あ、終わった。
この部活、本当に終わったかもしれない。
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