レベル1から酷使してきた〈ブラックドラゴン〉が退化?して〈クロトカゲ〉になったので、仕方なく潜入系の任務で酷使する

 ゲオルグは10歳の誕生日に教会で祝福を受けて【使役】のスキルを授かった。

 森で拾った卵から生まれた〈ブラックドラゴン〉のノーレストを相棒にした彼は、周辺国家を合わせても数人しかいない〘竜使い〙の冒険者として一躍脚光を浴びる。

 種族柄レベル1から高い能力を持つノーレストを引き連れ、成長すればその背に跨がり、年中無休で西へ東へ討伐依頼を受け倒し、時には日に10件以上の高難度依頼をこなし、時には種族として格上の上位龍すら相手取る。

 そんな日々が5年続いた。


 ある朝、種族限界であるレベル99に達したノーレストが個体進化を遂げる。

 より優秀な労働力になることを期待したゲオルグだったが、しかし〈ブラックドラゴン〉であったノーレストは、〈クロトカゲ〉という小さなトカゲに進化してしまったのだ。

 掌の上から見上げる物言わぬトカゲに対し、ゲオルグは告げた。


「戦闘系の依頼は難しそうだし、潜入工作とか諜報とか、そっち系で働いてもらうかな」

「なんでだよ! 休ませてくださいよ!」

「ノーレストがしゃべった!?」


 無給無休の労働に嫌気がさし、進化によって覚えた【変化】スキルと【隠蔽】スキルでただの〈クロトカゲ〉に成りすましていたノーレストは、労働争議のために遂にその真の姿を表す。

 世界で初めてテイムモンスターの労働基準法が作られる、切っ掛けとなった物語。

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