初級魔術しか使えない落ちこぼれ魔術士として追放された俺ですが、本当は遡及魔術しか使えない落ちこぼれ時術師です。過去に魔術を飛ばして現在を改変する程度じゃ、大した役には立ちませんよね…

 C級冒険者パーティ〈未来への猛進〉に所属する〘時術師〙のジョン・リヴィ・ヒストリカは、ある日突然、パーティからの追放を言い渡される。

 B級以上の高ランクを目指す上で、初級魔術しか使えない彼は邪魔だというのだ。


 パーティ資金で購入した装備の返却も求められたジョンだったが、彼は妙にあっさりと返却も追放も受け入れた。

 何故なら彼は、落ちこぼれの自覚があったので。


 かつて王立魔術学院の遺失魔術科で時魔術を研究していたジョンだが、神話にあるような【時間移動】や【未来予知】は単独発動すらできず。

 唯一、古文書に記載のあった【遡及魔術】のみは無詠唱で扱えたものの、自身の才能を見限って学院を自主退学し、冒険者になったのだ。


 過去の同じ場所に魔術を飛ばす【遡及魔術】の最大遡行時間は僅か10分。そしてジョンが専門の時魔術以外で使える魔術は、汎用的な初級魔術のみ。

 彼にできるのは所詮、前衛を崩壊させた「はずの」魔物の一撃の出鼻を潰す、物陰から奇襲してきた「はずの」魔物を奇襲前に炙り出す、誤答により罠が起動した「はずの」謎解きの正解を回答前に送る、そんな些細なサポートだった。


 パーティ追放後、野良パーティの数合わせ要員として活動し始めたジョン。

 しかし、その参加パーティの異常な事故率の低さが噂となり、彼は何故か幸運の持ち主として注目されてゆく。


 一方ジョンが去ったパーティは、追放翌日に壊滅、パーティを解散して各々が地元に帰り、新たな夢を目指し始めていた。

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