最終話 どんな君でも愛してる

 いつもより早起きして、ヘアメイクをして、私は私に魔法をかける。日曜日の朝10時、待ち合わせ5分前に待ち合わせ場所に到着した。拓也は既に到着していて、私は少し驚く。

「ごめん。おまたせ」

「……大丈夫。今来たところ」

 練習してましたみたいな雰囲気で言った拓也を見て思わず笑ってしまった。

「何?」

「ううん。なんでもない。早く行こう?」

 そう言って拓也の手を引っ張った。

「ちょ、ちょっと待てよ」

 拓也は慌てて紬について行った。

 その日のデートは楽しくてあっという間に時間は過ぎ、暗くなってきていた。

「そろそろ帰ろうか」

「うん。拓也、今日は誘ってくれてありがとう。楽しかったよ」

「こちらこそ楽しかった。ありがとう」

「またデートしようね」

「あぁ。そうだな」

 なんて会話をしながら歩いていると、車がとてつもない速さでこっちへ向かってきているのが見えた。

 え?車がこっちに向かって……

 紬はありえない光景にフリーズした。

「紬!危ない!」

 その瞬間何かに押されたような感覚がした。

「……いたた。かなり派手に転んじゃったな。拓也は大じょう……え?」

 拓也が隣で血を流して倒れている。

 拓也は、私を助けて……

「拓也!拓也!誰か!」

 それからのことはあまり覚えていない。我武者羅に助けを呼んでいると、救急車が来て拓也は病院に運ばれていった。拓也の処置が終わり、拓也の状態を聞いて安心したものの、拓也が心配で拓也の元へ駆け寄った。

「拓也。早く目を覚ましてよ……」

「……うーん」

「拓也?拓也!」

「つ、むぎ?あれ?俺は?」

「病院だよ。体調はどう?」

「所々痛いけど、大丈夫。まぁ、事故にあったんだから当たり前か」

「良かった。拓也、さっきは助けてくれてありがとう」

「紬が無事ならいいんだ」

「怪我の具合だけど、命に別状はないと思うけど念の為に今日1日入院だって。あとは、顔についた傷は残るみたい」

「そっか。また逆戻りになったな……」

「え?」

「紬、ごめん。別れてほしい」

「何言ってるの?嫌だよ」

「……嫌だったんだ。俺と一緒にいて紬が悪く言われたことが。だから、イメチェンしたのに、顔に傷ができたら逆戻りだ。それに紬もこんな顔嫌だろ?だから、紬、俺と別れて……」

 拓也の言葉を塞ぐようにして紬は拓也にキスをした。

 私にこんな勇気があったなんてびっくりした。でも、これだけは言わなきゃ。

「どんな君でも愛してる」

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