第21話 王子様はクラスでの地位を失う、けど友はいる



 りょうと和解した。

 僕たちの日常が戻ってきた。


 

 権堂ごんどう 夏寿男げすおは、学校を突然学校をやめた。

 本当にびっくりするくらい、直ぐに次の先生がやってきた。



 新しい剣道の先生はイケメンで、驚くべきスピードで人気者になった。

 ……その一方で、人気がなくなった人物もいる。



 だれであろう、りょうだ。

 夏寿男げすお事件があってすぐに、僕はクラスメイトたちから質問攻めに遭った。



『なあ、村井。なぎさと別れたってまじ?』



 どうしてこうも、この手の噂って広まるのが早いんだろう。

 僕が肯定すると……みんなが僕に言う。


『どうして別れたの?』

なぎささんの何がわるかったの?』

『てゆーか、振られたんだろどーせ?』



 と、どうやらみんな僕を悪者に仕立て上げようとしていたらしい……。

 けど……。



『みんな誤解しないでくれ』



 りょうは、皆にハッキリ言ったのだ。



『私が彼に振られたんだ。その理由は私の浮気が原因にあるんだ!』



 りょうは包みかすさず、事実を事実のママ伝えた。

 自分が僕と付き合っていたにもかかわらず、後輩の女子とデートして、キスまでしたと。



『まじか……』『湖の麗人が浮気……?』『うわ……しょっくう……』『てか女同士とか……』



 その件もあって、りょうの学内での人気は下落。

 アルピコ四天女よんてんにょからは降格されて……三天女さんてんにょとなってしまった。



 僕は弁明をしようとしたけど、りょうは黙って首を振った。

 罪には罰を、そういいたげだった。



 で、その結果どうなったかというと……


 お昼休み。



「さーごはんたべるかー」「めしめしー」「腹減ったー」『あれ、こうちゃん出番なしのまま!? 四天女よんてんにょの設定まで付与されたのに!?』



 クラスメイトたちが仲良い人たちと、昼ご飯を取る。 

 そんな中、りょうは教室でひとり、ぽつんとしていた。



「王子様誘ったら……?」「えー……ちょっとないわー」「浮気女はねえ……」「元四天女よんてんにょさんと仲良くするのはちょっとなぁ」



 ……そんなことがあって、りょうはクラスで孤立していた。

 でも……僕は立ち上がる。



「姫子、いい?」

「…………ええ、あなたがそうしたいなら」



 姫子の了解を取ったあと、僕はりょうの席へと向かう。



「ね、りょう

「健太……」



 僕はりょうに笑いかけていう。



「メシ、一緒に食べない? 三人でさ」

「! い、いいの……?」

「うん。姫子と二人だと、目立っちゃうしさ」



 姫子はため息をつく。

 りょうに向かってうなずいて言う。



「……さっさと昼ご飯食べましょ」

「う、ぐ……うう、ううぅううう……ありがとう……うう……」



 ポタポタと涙を流すりょう

 たぶんこれから大変だけど、でも大丈夫だと思う。



 りょうは心を入れ替えたし……。


「ねえ、健太。どうして僕を捨て置いておかなかったの? ほっとけばいいのに」

「言ったろ? 僕らは友達だし、幼馴染みなんだから」



 恋人では決してない。

 でも他人でもない。



 だから、教室で孤立していたら、手を差し伸べる。

 それくらいはしてあげる。



「ありがとう……うう……ありがとう……健太……それに、犀川さいかわさん」



 これで彼女の地位が回復するわけでもないけど、でも、少し心が楽になってくれれば良いかなって、そう思った。

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