「学園1の美少女【雪姫】と付き合ってるなんてウソだよね!?」と王子さま系元カノが泣きながら僕に謝ってくるけどもう遅い~僕を溺愛するJKと楽しく暮らしてるので今更ヨリを戻すつもりはありません~
第11話 元カノは王子様ムーブ改めないせいで、泣く羽目となる
第11話 元カノは王子様ムーブ改めないせいで、泣く羽目となる
なんやかんやあって、僕らは私立アルピコ学園へと到着した。
「
JRの駅を出て、学園へと向かう道すがら。
涼はあっという間にアルピコの女子生徒たちから囲まれていた。
涼は王子様系の美少女で、男女ともに人気がある。
が、特に女子からの人気が凄い。
数日学校を休んでいたこともあって、涼を心配する女子の声が、ものすごいたくさんあった。
さて……。
そんな風に、女子に囲まれた両派というと……。
「やあ、みんな。心配かけてすまなかったね」
……と、相も変わらずな、王子様ムーブをしていた。
……非常に、もにゃ、とした。
なんだろう、このもにゃ、とした気持ち……。
「……先に行きましょ、村井君」
隣を歩く
涼と一緒に確かに止まってると不自然に思われるし……。
それに、僕も今は涼を見ていたくなかった。
「あ、ま、待って!」
遠くで、涼が僕に声をかけてくる。
だがその他大勢の女子たちの黄色い声によって、かき消されてしまう。
「涼先輩どうしたんですかー?」「今日お昼一緒にたべましょうよぉ~」「今日もすっごく素敵ですぅ!」
涼は僕に近づいてこようとするけど、女子たちに阻まれて進めない。
「ちょ、ちょっと通してくれないかな! ごめん、ちょっと……!」
「えー、もっとお話しましょうよぅ」「そうそう! 一緒に学校いきましょ~!」
……僕はため息をついて、姫子とともに学校へと向かう。
涼は女子たちに足止めを食らって進めないでいるようだ。
「…………」
校門をくぐって、僕らは校舎へと向かう。
僕の足取りは非常に重い物だった。
「はぁ……」
知らず、ため息が出た。
たぶんさっきの、涼とその取り巻き女子の姿を見たからだろう。
いや……別にさ、いいよ。
僕らはもう関係が破綻したんだ。もう涼とは付き合ってないよ?
……でもさ、と思ってしまう。
でもさ、あなた反省してるとか言ってたよね?
そういう王子様ムーブが、女子を勘違いさせちゃうんじゃないの? って。
僕と別れたくないとかいってるくせに、態度は変えず、っていうのはどうなんだろう……って。
……ああ、自己嫌悪。
持てない男のひがみだよね、所詮……。
「……村井君」
「? どうしたの、姫子?」
きょろきょろと姫子が周りを見渡して、僕の手をとって、歩き出す。
「あ、あのそっちは校舎じゃない……」
「……わかってる」
やってきたのは、体育館裏だ。
前に壁ドンされたところだ。
姫子は周りに人が居ないことを確認してから、僕をぎゅっと抱きしめてくれた。
「あ、あの! 姫子!? どうしたの!?」
「……村井君が、辛そうにしてたから」
「辛そう……?」
「……ええ。
「!」
……姫子、よく見てるな。
そう、確かにあのとき、僕は落ち込んでいた。
「……辛かった言ってって言ったでしょう? 何が辛いの?」
……女子に、しかも家族とかならまだしも、クラスメイトに……弱音を吐くなんて、躊躇われる。
でも、姫子の優しい声音を聞いてると、知らず、思いが口をついた。
この子になら打ち明けて大丈夫だろう、って思ったからかな。
「……あんな風に女子からきゃーきゃーされて、いつも通り振る舞ってる涼を見て……さ。本当に反省してるのかよって、思っちゃった」
「……そうよね。そのとおりだわ。村井君の言うとおり」
よしよし、と姫子が僕の頭をなでてくれる。
僕のぐちを、嫌な顔一つせず、聞いてくれる。
それが……心地よかった。
「……村井君は悪くない。悪いのはあの女。村井君に誤解だなんだ言っておいて、態度一つ代えない。王子様ムーブのせいで女子を勘違いさせて、そのあげくが、女子からのキスなんだから。態度を改めてしかるべきだよ」
「そう……かな」
「……そうだよ。村井君かわいそう。あんなふうな態度見せつけられて、嫌な気分になったよね?」
「うん……すごくやだった」
てゆーか……。
「付き合ってる頃から……ああいう王子様ムーブ……やめて欲しかった」
あんなふうに、女子に勘違いされるようなムーブを取る必要なんて、あるとは僕には到底思えなかった。
なんで……。
「……村井君は正しいよ。なんでカレシがいるのに、他の女からきゃーきゃーいわれるような、王子ムーブするのか理解に苦しむ。こんな素敵なカレシがひとりいるんだったら、もうそれで十分なのに。なんでもっと持てようとするの?」
「……ほんとだよ」
姫子が全肯定してくれる。
重い気分がびっくりするくらい、軽くなっていた。
「……村井君、今度あの女がまた女子に囲まれてきゃーきゃー言われてても、気にしなくていいのよ。あの女は異常者なの」
「異常者……?」
「……ええ。たとえカレシがいても、自分がモテててないと気が済まないタイプなのよ」
「そんな……そう……かなぁ」
そこまででは、さすがにないと……。
「……思う?」
「……うん」
「……そっか。村井君は優しいね。本当にすごく優しい」
ぎゅー、よしよし、と姫子が頭をなでながら肯定してくれる……。
「……村井君くんの優しさに甘えて、いつまでも態度を改めない、あの女はほんとうに終わってるわ」
……
姫子の言うとおりじゃん、て思うようになっていた。
「ありがとう、姫子。もう大丈夫」
すっ……と姫子が僕から離れる。
「……楽になった?」
「うん、すっごく! ありがとう」
「……また辛くなったら、いつでもいって。大丈夫……わたしだけは、あなたを否定しないから。たとえ、どんな惨めな気持ちになっても、わたしはあなたの全部を肯定するから」
……そんな風に姫子が言ってくれたのが、うれしかった。
姫子は、優しい。
涼みたいに、自分にカレシを会わせるんじゃなくて……。
彼女のほうから、僕に会わせてくれる。
……こんな子が、カノジョだったらな……。
って、いかんいかん。
ついこないだ別れたばっかりで、すぐに乗り換えるとか。
そんなの、さすがに駄目だろ……。
と、そのときだった。
「健太……! よかった、見つけた……!!!!」
滝のような汗をかきながら、涼が僕らのまえに現れる。
「先に行っちゃうんだもん。探すのにすごい苦労したよ!」
「いや君が、女子といちゃいちゃしてるからでしょ?」
「い、いちゃいちゃなんてしてないよ……!」
「あ、そ。いこっか、姫子」
涼とこれ以上話しても、ダルくなるだけだって、思った。
だから僕はその場を離れることにした。
「ま、待って……! ぼくも一緒に教室行くよ……」
「いや、駄目でしょ。勘違いされちゃうじゃん、付き合ってるって」
「か、勘違いじゃないよ! 付き合ってるもん!」
……はぁ。
またそれだ。
どれだけ言っても、涼は僕の話を聞いてくれない。
……姫子とは大違いだ。
もう議論するのも馬鹿らしい。
僕は姫子と一緒に歩き出す。
「ま、待って……! 先にいかないで!」
「とにかく、ちょっと間を開けてお互い教室入ろう」
「やだやだやだ! どうして!? ねえ!」
……ああもう。うるさいなぁ。
「……下がれ、クソビッチ。村井君も、うるさいなぁって、迷惑に思ってるよ」
姫子が涼に向かって、はっきりそういう。
……今、僕が思ったことを、彼女が代わりに言ってくれた。
姫子は……僕を本当に理解してくれてる。
涼なんかとちがって……。
「は、はん! 何言ってるんだい。健太がそんなうるさいなぁ、なんて思ってるわけないよ! 浅い付き合いのくせに! わかったふうな口聞くな……!」
……姫子へ、そんなふうに反論する涼を見て……。
僕は、むっ、としてしまった。
「黙れよ」
「え!? ど、どうしたの……健太……? わ、私なにか言っちゃったかなぁ?」
すごい、怯えてる涼。
怯えるくらいなら、何も言わなければ良いのに。
「姫子は僕の気持ちを代弁してくれたんだよ」
「!?!?!?!?!?!?!?」
代弁、つまり涼に対して迷惑と思ってるっていう、気持ちを。
「そ、そんな……ぼく、迷惑?」
「うん、すごい迷惑かけてるよ」
「ど、どこ!? どこらへんが! ねえ、教えて! 必ず改善してみせるよ! だから……!」
もう……なんか話すのもダルくなってる。
「別にいいよ。治せるとは思えないし」
「治す! 死んでも治すから! お願いおしえて! ぼくの何が駄目なの!?」
「…………」
涼との会話、だるいな……。
すると姫子が僕の手を取って、歩き出す。
「……いこ」
「そう……だね」
涼には悪いけど、たぶんまた人の話聞かないターンに入ってる。
この状態で何言っても無駄だ。
……僕は、姫子と歩き出す。
「待って! 待ってよ!」
「じゃあ……10分したら教室来て」
「そうすれば機嫌直してくれる!?」
「……そんなわけないだろ」
「そんなぁああああああああああああ!」
涼はその場にへたり込んで泣き出してしまう。
……僕はそんな元カノを置いて、姫子とその場をあとにしたのだった。
涼を泣かせたことによる、胸の痛みは……もうほとんど、感じていなかった。
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