デート?④
イルカショーの会場まで向かいつつ、時間があるので水族館を回る。
「ねぇ、これ見て。」
海結が指を指した方を見ると、大きいダンゴムシがいた。
「キモっ!」
「え!?どこが?可愛くない?」
紹介文のところにダイオウグソクムシと書いてある。これが可愛く見えるというのは理解できない。
「可愛くないだろ。それとも、女子特有の何でも可愛い〜。って言うやつ?」
「でも、クリオネは気持ち悪いよ。この子はなんて言うか、キモ可愛い?」
自分で可愛いと言っておいて、何故か疑問形で返された。そもそも、キモ可愛いってなんだよ。キモかったらキモいし、可愛かったら可愛いだろ。
「ふーん。よく分かんねえな。」
「分かんなくても良いから、次行くよ。」
そのまま進んでいくと、大量のイワシが群れを作って泳いでいた。
「キレイだなぁ。」
「凄い。」
思わずそう呟く。群れを作って泳ぐイワシの鱗がキラキラ輝いて見えた。俺の横では海結もイワシに見とれていた。
正気に戻ってふと時間を見ると、十四時十分だった。開演は二十分なので時間がない。
「海結、もうすぐイルカショー始まるから行くぞ。」
「え?あ、うん。」
人波を掻き分けて会場に進む。
「はぐれるなよ。」
「うん。」
海結が握っている手をギュッと強く握る。そうして、会場に着いたが、いい席は埋まっていて、後方の席しか空いていなかった。
「ごめん。もうちょっと早く気づいてればよかったのに...」
「大丈夫だよ。前の方だと濡れるかもしれないからね。」
慰められると余計に申し訳なくなる。次のショーは十六時三十分からあるが、お土産も買わないといけないので、時間が無い。
「取り敢えず、座ろっか。」
海結に言われて、空いている席に座る。
「ほら、始まるよ。」
すると、イルカショーが始まった。飼育員さんとイルカが出てきて、色んな芸を見せてくれた。合図に合わせて、尻尾を振ったり、高いところに設置されたボールに触れたり、その度に、海結が隣で凄い!可愛い!と、はしゃいでいる。
そんな海結の横顔にドキッとする。ここ数日、こういう事が多くなった。ふとした仕草に、笑いかけるその笑顔に、胸が高鳴るような、そんな感じがする。
「イルカ見ないと勿体ないよ。」
海結に見蕩れていた事を悟らせないように、視線を逸らして、イルカショーに集中しようとするが、どうしてもできない。
「翔太くん。イルカショー終わったよ。」
「え?あ、ああ。」
ボーッといている間に、イルカショーが終わっていた。後半の記憶はほとんど無い。海結の楽しいし、可愛いし、面白かったね。という感想にそうだなとしか返せなかった。
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