デート?②
最寄り駅から三駅跨いで、水族館の最寄り駅に着いた。そこから更に十五分程歩いて、ようやく目的地に辿り着いた。
「翔太くん、早く入ろ。」
「ちょっと待て。」
俺の腕を引いて歩く海結を止める。
「そんなに急ぐな。まだ、お金払って無いから入れないぞ。」
新しく出来た水族館に休日ということもあって、カップルから子供連れまでかなり人が多い。行列という程でもないが、少し並んでようやく中に入ることができた。
中に入って一番最初にあったのは巨大な水槽だった。
「すごいね!水槽大きい!」
見た事のある魚も泳いでいるが、ほとんどは見たこともない魚だ。そんな魚が自由に泳いでいるし、水槽もデカくて迫力がある。
「テンションが上がるのも分かるけど、その調子だと最後まで持たないぞ。」
「だ、だって、水族館来るの小学生以来なんだもん。」
「だったら尚更押さえとかないと。最後まで見れなかったら勿体ないぞ。」
「それもそうだね。」
口ではそう言っているが、テンションがずっと高いままだ。まあ小学生以来でテンションが上がる気持ちはわからないでもない。
次は小さい水槽が並んでいる場所だ。その分人も多いが海結は一つ一つ食い入るように見ている。俺はというとクリオネに夢中になっている。
「うわぁー。クリオネじゃん。」
「嫌いなのか?」
「嫌いというか、気持ち悪いって感じ。」
確かにクリオネの食事シーンは結構グロテスクだ。でもなんでかは知らないけど、昔からクリオネ結構好きなんだよな。
二人でゆっくり見て回っていたが、昼間になって来て更に人が増えた気がする。
「ねぇ、翔太くん。」
先程までのテンションの高さがなりを潜めて、海結が服の袖を摘んでいる。
「どうした?」
「あのね。えっと...」
顔を赤くしてモジモジしている。
「トイレか?」
「違うよ!」
こういう時は大体トイレかと思ったけど違うみたいだ。
「だからね。えっとね。人が多くてはぐれたらいけないから手...繋がない?」
「え?」
驚きのあまり声が出ない。
「ダメ?」
「ま、まあいいけど...」
可愛い女子に上目遣いでお願いされて、断れるわけが無い。大分恥ずかしいが、思い切って海結の手を取るとどこか嬉しそうだった。
そして、手を繋いだまま道なりに進むと、ペンギンがいた。
「ペンギンだよ!可愛いね。」
「そうだな。」
「お前の方が可愛いよ。って言ってくれて良いんだよ。」
しばらく静かだったけど、ペンギンを見てすっかり元通りだ。
「お前って言ったら怒るくせに。」
「ふーん、まあいいけどね。」
少し、拗ねた声を出す海結とペンギンを眺める。
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