変化

目覚ましの音で目が覚める。さすがに海結と紗季さんに頼りすぎてた自覚があるので、余裕を持ってセットして置いた。布団から出てリビングに行くと、朝ご飯が準備してあった。


「翔太くん。おはよう。」


「おはようございます。昨日は朝寝坊してご飯食べられなくてごめんなさい。」


親父は朝早くから働きに出ててこの時間は居ない。そのため、紗季さんと二人きりで少し気まずい。


「そういう日もあるわよ。でも、これからはちゃんと起きて来るようにしなさい。」


素直に反省する。あいつがいた頃は確か朝ご飯も作ってくれてたが、居なくなってからは、ご飯を作って待っててくれることも無かった。だから感謝の心を忘れていたと思う。


「いつも、ありがとう。お弁当もご飯も作ってくれて。」


「どういたしまして。」


朝ごはんを食べつつ、感謝の念を伝える。決して家事をしてくれることが当たり前では無い。今思えば、前の母親に感謝の気持ちを伝えたことはあっただろうか。勝手に出て行ったことは許せない。でも、俺たちに非がなかったと言い切ることができない気がしてきた。それは、勿論海結に対してもなのだろう。

そこまで考えついたが家を出る時間になった。今日もまだ、海結に会えていない。なんというか少し寂しく感じる。また、ゆっくり話す時間を作ってもらおうと思う。


「行ってらっしゃい。早く海結と仲直りしなさい。」


見送りに玄関まで来ていた紗季さんに言われる。色々とバレてそうな雰囲気だ。


「そうだね。行ってきます。」


そう紗季さんに返して、開いた扉は昨日よりも軽い気がした。


学校に着いて教室に荷物を置いたら、三組の教室に向かった。


「碧。居るかー。」


「こっちの教室に来るなんて珍しいな。」


「いや、あの...海結、居る?」


教室を見渡しながら問う。


「まだ、来てないな。喧嘩の原因が分かったのか?」


「それは、正直検討もついてないけど、全面的に俺に非があることは分かった。」


「あんたも早く仲直りしなよ。」


教室の奥から凪砂さんも参戦してきた。もっと文句でも言われると思ってたのに、掛けられた言葉は意外なものだった。


「なによ?私があんたに文句でも言うと思ってたわけ?」


「なぜバレた!?」


「翔太は、分かりやすいからなー。」


やっぱり分かりやすいのか。紗季さんも海結も分かりやすいって言ってたしな。もうちょっとポーカーフェイス練習しょうかな。


「お、噂をしてたら来たな。」


碧の言葉に振り向くと海結が居た。


「あ、おはよう。」


「翔太くん。おはよう。久しぶりだね。」


挨拶は返してくれたが、見るからに不機嫌だった。それはもう口は笑っているけど、目は笑っていないという風に。

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