対話

「ひ、久しぶりだな。それで...」


「じゃあね。」


取り付く島もなく、自分の席に向かって行った。完全に怒っている。昨日は海結を見かけることも無かったから知らなかった。やっぱり昨日話をしに行けば良かったと後悔する。


「お、おい。元気出せよ。昼休みは俺たちが抑えいてやるから。」


「なんで私まで。」


「頼むよ。」


「仕方無いね。言っとくけど、あんたのためじゃないからね!」


「碧、凪砂さん。ありがとう。」


凪砂さんは、碧には弱くて仕方無しと手伝ってくれることになった。ただ、海結が俺の話を聞いてくれないかも知れない。だから、取り敢えずは家で話をすることに、承諾してもらいたい。

そして、 自分の教室に戻り、HRの時間まで話すことを考えながら過ごした。


HRで体育祭の出場競技を決めることになったが、あの勝負の時の走りを期待して、俺は学年対抗リレーに出場が決まった。半ば無理やり決まった出場競技だが、選ばれた以上全力でやりたい。

それこそ、空手の時の負けを払拭できるように、勝てたらと思う。


そして、昼休みを知らせるチャイムがなると同時に海結のいる三組に行く。教室を覗くと、碧と凪砂さんが足止めをしてくれている。そこに向かって歩く。


「海結。」


名前を呼ぶと碧と凪砂さんを振り切って、俺の横を通りすぎようとする海結の手を掴む。


「何?」


こっちを向きギロっと睨まれた。正直怖いが、ここを逃すとチャンスは無い。


「今日の夜、俺の話を聞いてくれ。」


俺を振り切ろうとする力が弱まった。


「正直なところ、海結が怒ってる理由は分からない。けど、このままは嫌だと思う。それにもっと仲良くなりたいと思うから、だから、話を聞いてください。」


「いいよ。聞いてあげる。だから手を離して、皆見てるよ。」


そう言われ、パッと手を離す。今の会話が聞かれてたのは恥ずかしい。けど、海結と仲直りの第一歩を踏み出せたのだから、それよりもどこか嬉しい。


「良かったな。早く仲直りしろよ。」


「おう。ありがとな。」


その後の授業はいつもより集中して受けることができた気がする。ただ、仲直りはまだできていない。今日の夜、自分の気持ちを伝えても何も変わらないかもしれないけど、また、一緒に登校してどこかに遊びに行けるようになりたい。

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