相談
その後の五、六時間目を使ってなにがわるかったのかを、考え続けたものの答えは出ず放課後になり、バイト先の事務所に居る。
「あ、先輩。お久しぶりです。」
「おお、久しぶりだな。元気が無いみたいだがどうかしたのか?」
あまり顔に出さないように努めていたつもりだったが、先輩にはバレてしまった。
「分かりますか?」
「君は分かりやすいからな。どうだ?私が話を聞いてやろう。」
「いや、それだと先輩のご迷惑に...」
「問題ないさ。それに迷惑など今更じゃないか。」
先輩が最近忙しそうにしているのは知っている。俺とシフトが被らなかったのはそのせいだと店長から聞いた。だから迷惑になると思って断ることにした。
それなのに、中学の頃からお世話になっているにも関わらず、何一つとして恩を返せていない俺に、こうも親身になってくれる。ほんとにかっこよくて、尊敬する先輩だ。
「でしたら、お言葉に甘えてもいいですか?」
「ああ、では話を聞こうかと言いたいところだが、時間が差し迫っている。幸い上がる時間も同じだ。前と同じ公園で聞かせてくれ。」
先輩が相談に乗ってくれることになったが、考え事をしていてぼーっとしている時間があることに変わりはなく、ミスを連発して、店長にも怒られてしまった。
バイトが終わり、先輩と歩いて公園へと向かう。道中にあった自動販売機でジュースを奢ってもらった。今日の慰めの意味も込められているらしい。
「確かに今日は、集中出来ていなかったが、誰にでもミスはある。そもそもあの程度のミスであれだけ怒られるのは、普段は完璧に仕事ができている証拠だ。」
「そうですかね。」
「ああ、そうだとも。私の言葉が信用できないか?」
「いえ、ありがとうございます。」
先輩のことを信用していないわけが無い。だからこそはい、と答えるしか無かった。
そこからもう少し歩いて例の公園に到着した。公園ベンチに腰をかける。一息ついた所で先輩が口火を切ったを
「バイト中に集中を欠いていたのは、その悩み事のせいなのだろう?私に話してみろ。」
「昨日、同じクラスの奴とどちらが海結に相応しいかをかけて勝負したんです。」
すると、先輩が話を遮ってきた。
「ちょっと待て。その海結に相応しいかを決めることになったのは何故だ?」
「海結のことで付き纏ってきてうざかったので、勝負をいどみました。勿論勝ちましたけど。」
「そ、そうか。」
先輩から僅かに動揺の色が見えるが気にせず話を続ける。
「それで、話の内容をクラスメイトに聞かれていて、それが海結に伝わってどういう意味だったのかを問われたんです。」
「なんて答えたんだ。」
「大切な家族だと伝えました。だから海結には俺の方が相応しいと思ったと...」
「よく理解したぞ。何故かは言えんが恐らく君が悪いと思う。あとは自分で考えることだ。」
そのまま俺に背中を向けて颯爽と帰って行った。それが分からないから考えているんだと、伝える暇も無いままに。
仕方が無いので、思考を巡らしつつ家に帰ることにした。
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