絡まれ

海結たちとはクラスが違うため教室の前で別れた。教室では既に、海結登校いていた男がいたという噂で持ち切りだった。幸いまだ俺だとはバレていないようで話しかけられたりはしていないが、それも時間の問題だろう。

なぜなら、海結がクラスで言いふらしている可能性が高い。その上、名前が変わっていて俺と一緒になっているからだ。放課後は覚悟しておいた方がいいのかもしれない。


始業式が終わりクラス単位のHRの始まった。今日は昼まででこのHRが終われば帰れるが、なかなか帰れないかもしれない。


「まず、ちょっとしたお知らせが有ります。」


担任がそう言うとクラスが少しさわがしくなる。高校生はいつだってサプライズが大好きなものだが、俺は嫌な予感しかしない。


「三組の桜良 海結さんの名前が変わって、上水流 海結さんになったので、名前を呼ぶときは気を付けてください。」


続けて担任が言う。クラスの連中も上水流という名前を聞いた瞬間、一斉にこちらを向いた。男子からは負のオーラが見える。今朝、海結と一緒に登校していた男が俺だと結びついたのだろう。

残りの時間は暇だったので、放課後に思いを馳せながら机に突っ伏し寝ることにした。


放課後を知らすチャイムで目を覚ますと、机の周りに人だかりができていた。


「お、起きたか。話聞かせてもらうよ。」


人が寝起きだってのに騒がしい奴らだ。集団の中から率先して話し出した奴は、金髪でいかにも陽キャな感じだが、碧とは雰囲気が全然違う。


「俺は、お前らと話すことは何も無い。」


そう言って帰り支度を始める。すると、取り巻きの女子がなにかブツブツ言ってるがよく聞こえない。多方、せっかく誰々くんが話しかけてあげてるのに〜、みたいなことを言っているんだろうが、どうだっていい。


「待て!君に無くても僕たちにはあるんだ。」


席を立ち上がり帰ろうとしたところで腕を掴まれた。面倒なことになって、どう切り抜けようかと考えていたら、 碧がやって来た。


「翔太〜。何やってんだ、早く帰るぞ。」


碧が来て驚いたのか陽キャは手を離した。その隙に間を通り抜ける。このまま帰っても明日にはなにか言われそうなので、一言だけ事実残して帰ることにする。


「俺の親とあいつの親が再婚しただけだから安心しろ。」


陽キャは放心状態で俺を見つめている。男に見つめられたって嬉しくない。


「遅いぞ。」


「悪い。変な金髪に絡まれてな。」


「変な金髪?オレのこと?」


「違ぇよ!お前はバカな金髪だろ。俺のクラスに居るんだよ。海結のことで絡まれたんだ。」


「へぇ。そんなのが居るのか。まぁ、なにか会ったら言えよ。ってバカな金髪ってなんだよ!」


声を上げて笑い合う。これからの学校生活は面倒事に巻き込まれながらも、楽しいものになると思った。

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