怒り

変な金髪に絡まれた始業式から数日が経ち、俺の元に平穏が戻ってきていた。何度か問い詰められることはあったが親の再婚だと話したらあっさり引き下がってくれた。未だに名前を知らない変な金髪以外は...


「翔太くん。一緒にご飯食べよ〜。」


昼休みを知らせるチャイムが鳴り、紗季さんが作ってくれた弁当を広げたら海結が教室に来た。前の空いていた席に座った。


「碧と凪砂さんは?」


「今日は二人で食べたいからってどこかに行っちゃった。」


できれば三人で来て欲しかった。おかげさまで教室中の視線を二人じめしている。


「上水流さん。ちょっといいかな?」


「どうしたの?」


また、変な金髪が絡んで来た。俺たちはただの家族だと言ってるのに、なにが気に入らないのか?


「そんな奴とより、僕たちと一緒に食べないかい?」


「なんで?意味が分からないよ?」


今こそ碧に助けを求めたいところだが、二人で楽しい一時を過ごしているであろうのに、邪魔をするのは忍びない。


「だって、そいつはいつも一人で居て、口数も少ない陰キャだよ。僕たちとご飯を食べた方が美味しいに決まってるじゃないか?」


言ってることは間違っていない。いつもひとりで居るし、学校じゃあんまり喋らない。でも言われっぱなしなのは腹が立つ。


「おい...」


「ねえ、なにを言ってるの?」


言い返そうとした途端、海結が変な金髪に向けて話し出した。明らかに怒っている。いつもの俺に向けられる可愛げのある怒り方じゃない。


「なにって、それは...」


「君は翔太くんのなにを知ってるの?いつも一人で居るのは否定しないよ。友達がいないからね。」


どさくさに紛れて傷を抉られた。友達ならいるだろ。碧とか、碧とか、碧とか。


「ほらやっぱり友達いないんじゃないか。」


変な金髪野郎も負けじと言い返す。その言葉が更に海結を怒らせるとも知らずに。


「でも、最近友達が出来てたよ。それにその友達といる時と、私たち家族でいる時は結構話すんだよ。」


「で、でも彼は...」


「陰キャだって?まあその側面があるのは事実だよ。でも、君こそ派手な金髪を取ってしまえばなにも無い、君の言う陰キャだよ?」


「はい、そこまで。」


ヒートアップして周りの見えていない海結を止める。正直めちゃくちゃ怖かった。金髪はもう言い返す気力も無さそうだ。


「でも!」


「俺の為に怒ってくれるのは嬉しいけど、せっかく紗季さんが作ってくれた弁当が美味しく無くなるぞ。」


「翔太くんがそう言うならいいけど...」


渋々納得してくれた。


「そういうわけだから、さっさと帰れ。」


小さくなった背中を見送り弁当に箸をつける。幸せそうに頬張るその姿からは想像出来ない程怖かった。今後海結を怒らせることはしないでおこうと心に誓った。

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