先輩②
今日の朝も海結に起こされて眠たい。午前中は課題を進めて午後からのバイトのシフトが入っているので、炎天下の中バ先に向かっている。途中で先輩の姿が見えたので声をかける。
「こんにちは、先輩。」
「おお、奇遇だな。今日は何時までだ?」
「五時までですね。ちょっと早めに上がらしてもらいます。」
「私と同じじゃないか。丁度いい聞きたいこともあるし、途中まで一緒に帰ろうか。」
返事は、はいかYESの二択だと迫られているような、有無を言わせぬ圧を感じた。
「はい。喜んでお供します。」
「なんだそれは。」
と、先輩は豪快に笑い飛ばした。こういう所も良く様になる人だ。
「時間も差し迫っている。少し急ぐか。」
「そうですね。急ぎましょう。」
早歩きでバ先に向かった。
店内に入って仕事の準備をする。俺の着替えが終わるタイミングと、先輩の着替えが終わるタイミングは 一緒で鉢合わせた。
「今日も四時間程頑張ろうな!上水流。」
「はい。お互い頑張りましょう。」
気合を入れあってタイムカードを押し仕事を始めた。
そのお陰か、いつもよりスムーズにタスクをこなすことができた上に、時間が過ぎるのも早かったような気がする。
「すみません。お先に失礼します!」
そう言って先輩と同時に仕事を上がった。帰る準備を終えて、一緒に店を出る。
「ちょっと時間借りてもいいか?」
近くの公園のベンチを指差して言う。
「大丈夫ですけど...」
二人でベンチに座る。しばらく続いた沈黙を破ったのは、先輩だった。
「あー、お前の姉の話しだが...」
「それは、別に親の再婚が原因です。まあ、偶然学校が同じなんて事もありましたけど、それ以外なんともありません。」
「そ、そうか。」
いつもなら目をみて話す先輩が、一向にこっちを見てくれない。それに、気まずそうや雰囲気が漂っている。
「それで、その子はかわいいのか?」
「可愛いと思いますよ。なにせ学年一可愛いらしいですから。」
先輩が一瞬落ち込んだような気がしたが、直ぐに元通りになった。
「学校の勉強はついていけてるか?」
急に話題を変えてきた。
「正直やばいです。国語はできるんですけど、それ以外は難しいですね。」
「それなら、またわたしが教えても構わないぞ。」
「すみません。遠慮しときます。これ以上お世話になる訳には行かないので。」
嬉しい話ではあるが、頼りすぎも良くないと思う。こればっかりは自分の手で、最悪海結にでも聞けばいい。
「出過ぎた真似だったな。すまない。」
「そんな。先輩が謝る話じゃないですよ。高校受験のとき、勉強を教えてくれたじゃないですか。空手を教えてくれたのもそうです。俺、先輩に感謝してるんですから。」
「そうか。そう言って貰えて嬉しいよ。勉強頑張るんだぞ。じゃあな。」
先輩が帰ってしまったので、一人寂しく帰ることになった。
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