お出かけ②

家から三十分ほど歩いてショッピングモールに着いた。予想以上に人が多い。家族連れからカップルらしき男女までいる。


「まずは翔太くんの服を見に行こっか。」


「遠慮する。」


「だって、翔太くん私服ダサいじゃん。」


俺の私服がダサいとかはどうでもいい。そもそも俺がオシャレに気を使ったところで誰も気にしない。


「俺の私服がダサいのは昨日から分かってることだろ。」


「あれは、部屋着だと思ったの!」


部屋着とか私服とか気にしたことがないから、何が違うのかが分からん。


「とにかく、俺の服選びは却下だ。」


「じゃあ、その代わり私の服選んでよ。」


不機嫌な面持ちで歩き出す海結。そんなに俺の服を選びたかったのだろうか?

それより、凄い量の視線を感じる。俺に、というより海結に向けられるものの方が多いような気がする。俺にも向けられてるのは、多分だけど妬みや僻みっぽい。まぁ、海結が気にしてないので俺も気にしないことにする。


「着いたよ。」


「そうか。で、どうすればいい?」


「服選んでくるから待ってて。」


ここまで来て放置らしい。店の中に入っていく勇気は無いので、大人しく待ってることにする。


しばらくして、海結が服を二着持って戻ってきた。


「どっちがいいと思う?」


二着ともTシャツだが色が違うかくらいしか分からない。両方とも同じに見えるので、


「どっちでもいいだろ。」


と答えたら更に不機嫌になった。どちらかは選んだ方が良かったらしい。


「左の黒っぽいやつの方がいいんじゃないか。」


「そう?じゃあ買ってくるね。」


少し機嫌が良くなった気がした。女ってのはちょっとした事で機嫌がよくなったり、悪くなったりするから気をつけろって親父に言われたのを思い出した。


「お待たせ。見てこれ。」


そう言って、買った服を見せてきた。


「は?お前これ...」


「そうだよ。翔太くんセンス無いからね。」


見せてもらった服は俺の選んだ方ではなく、もう一つの白い方だった。センスがないのはそのお通りだが、あまりにも酷い仕打ちじゃないか?


「ちょっとした仕返しだと思ってくれたらいいよ。」


思い当たる節がないことも無いので、仕方ないかと納得させる。これで機嫌が良くなるなら別にいいのかもしれない。俺が学ぶべきことは、女は怒らせたら怖いってことだな。


「あっ!」


「うぉ!急にでかい声を出すなよ。」


「ごめんごめん。それより、もうお昼だよ。ご飯食べに行こ。」


時計を見ると十二時を少し過ぎた当たりを指していた。どうやらフードコートが有るみたいなので、そこで昼食を済ますことにする。


昼食を取り終えやることも無くなったのか、ひたすらぶらぶらするだけになった。人通りの多いエリアに着くと、


「海結ちゃん!」


声を掛けられた。声が聞こえた方を向くと金髪のギャルと金髪のチャラ男がいた。


「あ!鈴ちゃんに永井くん!どうしてここに?」


海結の知り合いみたいだ。だとすると、同じ学校の同級生なんじゃないか?


「あたしたちデートしてたんだよね。」


「そうそう。それで桜良さん見かけたから声をかけたんだ。」


どうか、そのまま俺に話を振らないで頂きたい。


「それで...そっちの男の子は?」


多少遠慮はしたのか少し申し訳なさそうに聞いてきた。


「えっと...私の弟、かな?」


「えぇー!」


ギャルとチャラ男の絶叫が響き渡った。

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