第4章 第5話
明朝。約束通りカーネル家に集まった関係者四人が、ソファーに座って顔を突き合わせていた。魔王が夜中のうちに村を出たことは、既に共有していた。ウバーは、みすみす逃がしたことに苦言を呈したが、すぐに黙った。
目を覚まして村で暴れる可能性や、村人に目撃される可能性を危惧していたのは、他でもないウバーだ。その懸念がなくなった以上、目下の課題は解決した。そう指摘されては、ぐうの音も出ない。
取り急ぎ危険性の低い魔王の所在については置いておき、カーネルの話を聞くことになった。カーネルの向かい側に座る同齢三人が、背筋を伸ばす。
「俺と、アッサムの父親のメイージは、若い頃は一緒のパーティを組んで、世界を回っていた。自慢したいわけじゃないが、俺達は首都でもそれなりに名の通る剣士だった。そんな俺達がこのヴィラベリオの村に腰を
平和そのものだった生まれ故郷の村の近くに、そんな噂があるとは
「俺達は村を拠点に森の中や山の中を探し回ったが、奴はなかなか尻尾を出さなかった。噂を聞きつけた腕利きの剣士や魔法使いがこぞってやってきたが、結果は同じ。三年が過ぎた頃には、噂はデマだと言って、奴らは他へ行っちまった。最後に残ったのは、俺とメイージだけだったよ」
そこで言葉を切り、カップの紅茶を一口
「それからさらに二年が経って、俺達も諦めてよそへ移ろうかと考えていた頃だ。ある一人の魔法使いの女がやってきた。つり目で口の悪い、だが芯のある、強い女だった。メイージの奴、そいつに一目惚れしちまってなあ。玉砕覚悟でプロポーズしやがった」
「まあ、大胆ね。それで、結果はどうなったの?」
いわゆるコイバナになり、ダジリンが目を輝かせて尋ねた。
「三年後――いまから十五年前に、その女が産んだのがアッサムだ、って言えば、結果は分かるな?」
ダジリンがさらに目を輝かせた。魔王に関わる話だというのに、年頃の少女の素が出てしまっている。アッサムも、集中しなければいけないと分かっているが、物心ついたときには既にいなかった母親の話が登場して、そちらに気を持っていかれてしまいそうだ。ウバーは「その話が、魔王とどう関係が?」とでも言いたげだ。
「まあ、そう
飲み込んだはずの問いを読まれた上に反論され、心を見透かされたウバーはばつが悪そうに目を逸らした。
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