第4章 第2話
「ダジリン。そいつを回復してやってくれるか」
カーネルから信じられない依頼をされたダジリンはもちろん、ウバーも面食らった。懇願した本人であるアッサムですら、顔を上げて呆然としていた。
「か、カーネルさん! 正気ですか!」
「ああ、歳は食ったが、ボケちゃいない。責任は村長の俺が取る」
「カーネルさん……。いいんですか」
「アッサム、お前が言い出したことだろうに、なんて顔してるんだ。俺はお前のただの感想に同意だ。これだけ近くに魔王がいながら、今の今まで村が平和だったってのが、何よりの証拠だ」
村長の意見とあっては、さすがのウバーもこれ以上の反論はできなかった。ダジリンは戦々恐々としながらも、彼女の傍に近づいた。
「心配すんな。そんだけの手負いだ、回復したってすぐには目を覚ましはしない。昨晩のアッサムがそうだっただろう」
それを聞いて安心したのか、ダジリンは躊躇なく手を
「ダジリン、ありがとう。本当に……ありがとう」
「いいのよ、アッサム。魔王さんを回復するなんて、貴重な体験しちゃったね」
世間に知れたら非難の的にされるかもしれないというのに、あっさりした返事だった。この先、ダジリンに矛先が向けられるようなことがあれば、絶対に自分が守ろうと誓った。
「ウバー、ごめん」
「やってしまったものは、もう仕方ないさ。それに、君が言うように、角さえなければ、普通の美少女だ」
「ほう、アッサムはこういう顔が好みか。まあ、悪くない趣味だな」
「僕は美少女だなんて言ってない! カーネルさんも、悪ノリしないでください!」
顔を赤くしていては、いくら言葉で否定しても効果は薄い。ここに魔王を運んできたときとは打って変わって、穏やかな空気になった。
「いったんはこれで良い。だが、この後が問題だなあ。夜とはいえ、角の生えた女をお前達が運んでいる姿を、村の誰かに見られたかもしれない。元気になったからといって、真昼間に堂々と村を歩かれるのも困る。どうしたもんかなあ」
アッサムは連れてくるのに必死で、周りの目を気にしている余裕などなかった。カーネルに指摘されて初めて、やってしまった、と思った。回復する許可をもらうだけなら、村の中に運ぶのではなく、カーネルの方を村の外まで連れてきてもよかったのだ。背負った彼女の息があまりにも弱々しいので、そこまで考えが回らなかった。
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