第1章 第3話
カーネルの他、少年と少女がひとりずつ並んで待っていた。小さい村で知らない顔などあるはずもなく、どちらも幼馴染だ。
「遅いぞ、アッサム」
「アッサム、おはよう。いい天気ね」
幼馴染の少年の方はウバー、アッサムより頭ひとつ大きい体躯の、歳の割に厚めの筋肉がついた剣士希望者だ。悔しいが、腰に下げた剣が様になっている。
少女の方はダジリン、垂れ目でおっとりした魔法使い希望者。黒いローブは膝までの長さに設計された商品のはずだが、小柄な彼女の足元まで垂れている。一緒に育った仲でなければ、彼女が同い年だとは信じられなかったかもしれない。
アッサムを加えた三人は、一番誕生日が遅いアッサムが十二歳になるまで待ち、三人一緒にチュートリアルを受けようと約束していたのだった。そして、その日が来た。
「よし、全員揃ったな」
カーネルの一拍で、横一列に並んだ十二歳たちが一斉に顔と身体を彼に向けた。いよいよだ――アッサムの左手の剣が、いつもより重量を増したように感じた。
「もう知っているとは思うが、通例に従って説明させてもらう。十二歳になると、剣士または魔法使いになるためのチュートリアルへの挑戦が許可される。内容は単純明快で、村の外で初めて出会った魔物と一人で闘って勝利すること。もし負けたら、挑戦は失敗。だが、何度でも再挑戦できるから、無理をすることはない」
そうそう、と人差し指を立てて補足する。
「再挑戦するにしても、全く同じ個体に出会えるとは限らないし、そもそも同じ個体かどうかの見分けなどつかない。だから、同じ種族の魔物と倒せたら、それでよしとする。最初にウルフに出会ったら、ウルフに勝つまでがチュートリアルだ。ウルフに遭った後でスライムに何回勝っても、クリアにはならないから、よく覚えておくんだ」
――チュートリアルなんだから、戦い方の感覚が掴めればいいと思うんだがなあ。なんで初めて会った魔物にこだわるのか、お偉いさんの考えは分からんよ。
アッサムが思っていたことを、カーネルがそのまま代弁してくれた。お偉いさんが目の前にいない以上、苦情を言っても仕方がない。ろくに戦闘経験もない素人が、安全なところから口を出しているだけ。そう割り切るほかなかった。
「道具の使用は可能だが、何でも使っていいわけではないし、無尽蔵に持てるわけでもない。相手を攻撃できるアイテムを使って勝っても、剣も魔法も使わないのでは腕試しにはならんからな。そこで、薬草や毒消し草が入った麻袋をこちらで用意した。持っていきなさい」
三人がそれぞれ麻袋を受け取り、紐を腰や肩にかけた。
「説明は以上だ。今から村の外に出る。だが、あまり遠くには行かないこと。お前たちに危険が及びそうなら、俺達が助ける。では、検討を祈る」
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