第12話 東の砦

 東方竜騎士団の砦に戻り、いつも通りの日々が過ぎた。今のところ、隣国との関係は良好だ。盗賊退治が主な仕事といっていい。


 東方竜騎士団の砦は静かだ。相部屋の仲間と軽口を叩きあっていると、扉が軽くノックされた。

「リヒャルト、ちょっといいか」

半年前、王都竜騎士団から移動してきたヨハンがいた。


 気を利かせた仲間が席を外すと、ヨハンの質問攻めにあった。

「副団長にあったか」

「元気だったか」


 おかげで何があったか、洗いざらい話をさせられた。リヒャルトが王都竜騎士団へ移動する話もあったが、立ち消えになったことも話をさせられた。

「戻るなり押しかけてすまなかった。話を聞かせてくれたことに礼を言う」

ヨハンは何かを考え込みながら、部屋を出て行った。


 直後、ヨハンが一週間程度の休暇をとった。移動して来てから半年という短期間にいきなり休暇をとったヨハンへの陰口を言う者もいた。休暇明け、意気揚々と戻ってきたヨハンは、辺境伯爵家当主である父から勘当されたことを報告し、王都竜騎士団への移動を願い出た。


「お前はいつかやると思っていたが」

東方竜騎士団団長は苦笑していた。

「リヒャルトの話を聞いて、戻りたくなりました」


 辺境伯爵家の次男という地位を失ったのに満足気なヨハンに、周囲は首を傾げた。ヨハンは、東方竜騎士団の副団長になるべく派遣されてきたのだ。そのヨハンが、一年も経たないうちに、王都竜騎士団に舞い戻るという異例の移動となった。実家からの勘当という不名誉も気にしないヨハンに、首を傾げるものは多かった。


 東方竜騎士団団長は苦笑しつつ、上機嫌に飛び立っていったヨハンを見送った。蝙蝠ことカールはすっかり拗ねてしまった。

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