第13話
称号『龍殺し』を取得。
俺は村周辺から出たとしてもギフトが使えるようになった。
空から雨とともに人が降ってきた。
「薬汁かけとけば大丈夫って言ってたし、塗りたくるしかねぇな」
空から降ってきた人物に俺特性の薬汁を頭から爪先までたっぷりかける。
全身に傷を負っていたのでこれが正しい治療なのである……たぶん、おそらく、きっと。
「しかし……」
我が家に捨て身で突撃してきた人物を観察する。
イコほどの小柄な身体、艶のある黒髪を白い棒のような髪飾りで結っており、透き通るほどに白い肌は金色の汁まみれ。
「男、か?」
「女の子じゃないかな。詳しくは起きてからにしようよ。ほら、持ってきたよ」
龍に刺さっていた数本の剣と顔よりも大きな卵を肩に担いだイコが部屋に入ってきた。
なんの卵だろうか。
「ありがとう。でも重かったろ。やっぱり俺が取りに行くほうが良かったんじゃないか?」
「ふふ、ボクが行ったほうが良かったんだよ。あんまり重くなかったしそんなに気にされると困っちゃうよ」
イコが苦笑いするのを見て話を変えることにする。
困らせたいわけではないからだ。
「それならいいんだがな。ところでそれは何の卵なんだ?」
「これは龍の卵さ。凄く珍しいんだよ」
死んだ龍は転生して卵になり、新たな生として再誕するらしい。
とんでもない生物だ。
「龍の卵か……そいつが生まれた後に殺した相手に復讐するなら処分するが」
「どうなんだろう。甦った龍は以前よりもステータスが伸びやすくなって、最終的には強くなるって聞いたし記憶や経験の一部を継承しているのかもしれないね」
取り扱いが難しいな。
かなり硬いうえに魔力障壁まで展開されるので卵を砕くにしても苦労しそうだ。
「どうするか 卵の魔力が枯渇するまで攻撃するのは億劫だな」
「龍の魔力は膨大だからいつ無くなるかわからないよ。とりあえず放っとけばいいんじゃないかな」
龍の卵は空気中の魔素を取り込んだり、他の生物の魔力を吸収して成長するらしい。
魔力を与えずに放置しておけば魔素しか取り込めず、孵るまでに時間がかかるだろうとのことだ。
「そうだな。放置が良さそうだ」
「生まれた直後なら殻が無い分、簡単に倒せるかもね」
いつ生まれるかは知らないが、その時の状況によって対応する。
好戦的なら残念だが再び卵へ戻ってもらうことになるだろう。
「捨てるとか売るとかじゃダメなのか」
「ボクは構わないけど生まれた龍は腹ペコだから周辺を喰らい尽くして滅ぼしてしまうから危ないね」
街一つくらいは簡単に崩壊するらしい。
その時に得た魔力で報復に来られても困る。
「村で暴れられるのも勘弁なんだがな」
「そんなに心配しなくても大丈夫だと思うけどね」
イコが大丈夫だと言うのだから大丈夫に違いない。
とりあえず卵は放置に決定した。
「なんか注意点とかあったら教えてくれるか?」
「魔力を与えないことくらいだね」
生物が魔素を取り込んで加工されたモノが魔力と呼ばれている。
この魔力を使って色々すると魔法が使えるらしいが俺は魔法が使えないので詳しくはわからん。
「素手で触るのもダメそうだな」
「そうだね。なるべく素手で触らないようにしたほうがいいよ。微量でも魔力が吸われるのを防げるからね」
どんな生物にも魔力があり、気づかない内に垂れ流していることもある。
龍の卵はそういった魔力も吸い取るのだ。
「布に包んで放置しておくか」
「やっておくよ。ボクなら吸われる心配も無いからね」
イコなら魔力を分解して運べて安全なのでさっきも取りに行ってくれたのだろう。
ついでに俺特性の薬汁を与えたらすぐに生まれるから絶対に近付けてはダメらしい。
「厄介事も放置に決定したし、あとはこっちの寝てる人だな」
「ボクとしてはこっちのほうが厄介だと思うね」
俺も同感だ。
半殺し状態の龍とその後に傷だらけで降ってきた人……なんとなく関連性に気付くわけで。
「面倒な事ばかりだな。去年までは平和……でも無かったな」
「去年よりも大事になりそうだけどね」
また何かしらと死闘を繰り広げることになるのだろうか。
戦闘力の低い豊穣の神でも一応は神クラスのステータスであり、その恩恵を得た俺の腕を食い千切るような魔物と戦うのは遠慮したい。
「あんな化け物と戦うくらいなら薬汁で結界作って逃げるからな」
「あれは例外だと思うけど……でも何が起こるかわからないね」
過去に俺特性の薬汁を魔物に与えたらレベルアップしたという不幸に見舞われた。
他の人が作った濁った汁はダメージを与えるのに、俺の金色の汁は成長を促すとか理不尽である。
「アンデッドが即死だったから魔物もいけると思ったのにな」
「弱い魔物だったらエーテルに充てられて死んでただろうけどね」
千切れた腕すらも簡単に繋げる俺の薬汁は凄いのだが、強い魔物は取り込むので注意すべきってことらしい。
とりあえず龍には使わないようにしようと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます