第3話 夕陽と蝉と静寂

蝉の声が鳴り止んだ。





……あれ……?


あれ?



あいつは?


あいつは消えていた。

姉ちゃん、姉ちゃんはどこだ。

ゴミの山を足で掻き分け、キッチンや寝室を見渡した。

いなくなっている。


「姉ちゃんどこ?どこ!」

気が動転していたのか狂ったように叫んでしまう。

どこを探しても見当たらない。


バラバラの靴を押しのけ玄関を開けた。

外は綺麗な夕陽が見えていた。


 狭いアパートの階段を途中捻挫しながら降り、大声で叫びながら走った。

道路は何故か車がひとつも走っていない。

いつもなら蝉の鳴き声と良い勝負をするほどうるさいのに。


でも、なんだか良い気分なのかもしれない。

あいつが、親がいなくなったおかげだろうか。


とにかく走り回った。

蝉の声が再び、だんだん聞こえてきた。

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