若者よ、選挙へ行こう。

みのるしろいし

第1話

池上:(アナウンサー)参議院選挙は今日公示され、18日間の選挙戦がスタートします。


【テレビの電源を切る】

橋本:また選挙かぁ・・・

池上:興味ないの?

橋本:どうなっても特に末端は変わらないかなって。

池上:無関心すぎやしないかい?

橋本:そう?

池上:給付金欲しくないの?

橋本:ほしい。

池上:もらえないかもしれないよ。

橋本:マジ?

池上:今蔓延してるウイルスどう思う。

橋本:まだ怖い。

池上:インフルエンザと同程度くらいの扱いになるかもよ?

橋本:は!?絶対まだでしょ!?感染者数爆増してるよ?

池上:消費税どう思う?10%高いと思う?

橋本:ちょい高いと思う。5%に戻してほしい。

池上:行かなかったら据え置きの可能性あるなー

橋本:ガチィッ!?

池上:ほら、少しは興味持たないとそんなことになるよ?

橋本:なんでそんなに詳しいのさ!?

池上:まあ、この数年で大きく変わったからね。そりゃ興味も出るさ。てかお前くらいだぞ?興味持ってないの。

池上:今、投票率って何パーぐらいか知ってる?

橋本:40%切ってるとか話題だったような。

池上:古い!あれから試行錯誤して今や9割が投票してるぞ。

橋本:マジ!?

池上:じゃあ教えてやっからお前も少しは興味持て。

橋本:今の時点で正直スッゲェ興味ある。



池上:まず、参議院選挙の制度は知ってるか?

橋本:公民の頃の知識しかないけど、

橋本:465議席を小選挙区比例代表制で選ぶんだっけ?

池上:それは昔の衆議院な。

池上:お前が覚えてる頃の参議院選挙は、

池上:124議席を大選挙区と比例代表で選ぶんだ。

橋本:少ないね。

池上:参議院自体は248議席あるぞ。任期6年で3年毎に半分を選挙するんだ。

橋本:でもなんで半分ずつなの?

池上:参議院って、解散することがないのよ。

池上:一時の世論や動向にとらわれずに議論するためにね。

池上:だから、流れを止めないために3年周期で半分を改選してるの。

橋本:衆議院って4年だっけ?解散ありの

池上:そう、国民の意思がその分反映されやすいから、強い権限を持ってるのは衆議院だよ。

橋本:衆議院の優越、だっけ?

池上:おお、覚えてるじゃん。

橋本:まあ、小中はまじめだったからね?

橋本:でも、何があるかは忘れちゃった。

池上:まあ、良い質問だよ。

池上:予算や条約・内閣総理大臣の指名は、両院で異なった場合、衆議院の意見が採用される。

池上:法律案も参議院で否決されたら衆議院で再審議されて、三分のニ以上が賛成したら可決される。

橋本:参議院ってそれほど重要じゃない?

池上:いや、大切だよ。一つの議員行き過ぎたことを抑えたり、

池上:足りないところを補ったりするためにね。

池上:1回選ばれたら6年は変わらないから、ちゃんと自分の意思を反映してくれる人を選ばないとね。

橋本:なるほど・・・つまりさ。

橋本:衆議院は、実力テストで

橋本:参議院は、中間・期末テストみたいな感じ?

池上:まあ・・・視点は悪くないかな。

橋本:でも、今のは2020年代の頃の話なんだよね?

池上:そう、今は制度がかなり変わって参政しやすいようになってるよ。

橋本:へぇー。


池上:まず、被選挙権についての変更

橋本:被選挙権?

池上:立候補、って言ったら良いかな。

橋本:あれって年齢とお金だったよね。

池上:そうだったね。

橋本:今はどうなってるの?

池上:供託金については国会も市町村議員も、一律10万円になったよ。

橋本:10万・・・そもそも何でいるの?

池上:売名や選挙妨害での立候補を防ぐため。

池上:一応、預けるという意味合いだから当選したり一定の票数集めたら返金されるよ。

橋本:なるほどね!でも、安くなった分売名や選挙妨害しやすくなるのでは・・・?

池上:そこは、この後説明するシステムでちゃんと振り分けられるから大丈夫。

橋本:前はもっと高かったの?

池上:衆議院・参議院議員の場合は300万円だったね。

池上:一番安かった市町村議会でも15万円だったかな。

橋本:ほぇー!?

池上:供託金を下げることで興味のある人や、やる気のある人を多く立候補させたいという意図だね。

橋本:なるほど、ということは年齢も18歳以上?

池上:そう、高校卒業後からなら行けるようになったよ。

橋本:選ばれる側に意欲の高い人を取り入れられるようになったんだね。

池上:今の総務大臣が最年少大臣だからね。あの人頭も回ってすごいよね。

橋本:凄いよね、よっぽどいい大学でたのかなぁ。

池上:あの人、実は中卒なんだよ。

橋本:そうなの!?凄いね。

池上:中学卒業後に高校に行かない選択をしたんだけど

池上:それを見かねた起業家が資金を援助したんだって。

池上:その子は海外に行って、その国の政治を体感したり学んだりして

池上:日本に戻ってから独学でいろんなことを学んだんだって。

橋本:この制度だからこそ生まれた才能なんだね。


池上:次に、投票制度の改革

橋本:選ぶ側の改革だね。

池上:まず、インターネット投票が始まった。

橋本:お、これは良いね。投票日までなら何時でも投票出来るわけだ。

橋本:でも、本人確認とかどうやって管理してるの?

池上:良い質問ですね!

池上:マイナンバーカード持ってる?

橋本:持ってる!

池上:それを使うのよ。

橋本:なるほど!

池上:投票のお知らせが届くでしょ?そこにQRコードがあって

池上:そこから投票サイトにアクセスできる。

橋本:今やってみようかな。

池上:投票日の開票時間前までなら何時でも出来るよ!

橋本:マイナンバーカードを使った認証を挟むわけだね。これなら個別も出来る。

池上:そう、マイナンバーカード普及率が100%になった今だから出来る。

橋本:でもさぁ、この画面って投票する人を選ぶのと、政党を選ぶんだよね?俺よく知らない・・・

池上:そうだよね。選挙カーとかテレビ見なくなった今、マニフェストに触れる機会って無いよね。

橋本:選挙カーって最近見かけないね

池上:騒音問題と各政党が交通ルール無視しまくった結果無くなった。

橋本:その場合、この画面からじゃ無理よね?

池上:隣のQR読み込んでみ?

橋本:はいよ・・・って、マッチング!?

池上:そう!今増えてる理由がこれなんだよ。

橋本:お見合いだけじゃなくてか・・・

池上:自分の思想を国政に反映させてくれる人を選ぶんだよ?お見合いみたいなもんじゃん。

橋本:一理あるな。

池上:まず自分の考えをはい・いいえに当てはめていくんだ。

橋本:無回答は?

池上:出来ない、ちなみに候補者側もしっかり記入することが義務化されてる。

橋本:タレント議員とかが知名度だけで立候補して中身は別の人の丸パクリとか無いわけだ。

池上:泥棒猫の話ね・・・それはもう無いよ。

池上:入力終わった?

橋本:終わった!意味が分かりにくいやつもワードタップしたらすぐ検索結果出るから分かりやすいね。

橋本:おー!90%以上が3人該当した!

池上:珍しいね、あって80%以上。

橋本:あれ?でもこの人たちみんなウチの選挙区の人じゃ無い。

池上:実は、この制度を使った時に限って他の選挙区の人でも投票出来るの!

橋本:凄いね!自分の思想と合致した人に投票したいから良い制度だ。

池上:比例代表もマッチ度で選べるよ。

橋本:オッケー!開票時間まで変更できるんだー。

池上:そう。思想が急に変わることもあるだろうからね。

橋本:でもさぁ、一部のパソコンとかスマホがからっきしー、って言ってる人たちはどうなるの?

池上:当日の投票所とか期日前投票所は残ってる。

橋本:残ってるんだ。

池上:ただ、地区とか都道府県の縛りが無くなった。

橋本:ほう!私昔ね、当日住んでる選挙区内には居るんだけど

橋本:別の投票所の近くに居るから

橋本:ダメ元で投票出来ないか聞いたらダメって言われたことあるから、おかしいと思ってたの!

池上:そう、それもQRコードとマイナンバーカードで解決してる。

橋本:なるほど、そのQRコードを読み込むことで出来る様にしたんだ。

池上:投票所がパネルになってて、QRコードとマイナンバーカードを読み込ませると、

池上:その人の住んでるエリアの選挙区候補一覧が出るの。タッチして投票出来る仕組み。

橋本:鉛筆で書くのはとうの昔なんだね。

池上:こうすることで電子化されて、集計作業が必要無くなるの。

池上:人件費や用紙代が削減されて、その分供託金に反映されてるのよ。

橋本:なるほどね、良い改革だ。

橋本:でもさ、思想登録とお金だけなの?それだと漢字読めないとか知識少ない人も立候補出来てしまわない?

池上:鋭いなぁ!そう。お金と思想がハッキリある人は立候補出来てしまう。

池上:それを防ぐために出来た制度もあるよ?

橋本:・・・もしかしてPSTのこと?

池上:そう!PST。国民一斉テスト。

橋本:あれ面白いよね。任意とはいえ無料で自分が国内でどれだけの位置にいるか知れるって。

池上:表向きは学力向上とか、一般常識試験の代わりになってるけど、実は立候補者はこのテストを受ける必要があるんだ。

橋本:なるほど、それでふるいにかけてるんだ。

池上:そう、基準は公表されてないけど平均以下だと立候補出来ないと言われてるみたい。

橋本:へぇー。でも、よく出来てるね。

池上:これらの制度も、政治をわかりやすく、便利にを目指した若い人たちが作ってきてくれたものだよ。

橋本:俺も興味出てきたなぁ。

池上:立候補すんの(笑)?

橋本:してみようかな。

池上:割と鋭いところもあるからな。

橋本:割とってなんだよ。

池上:ちょっと前まで投票に行く気すらなかっただろ(笑)?


【数年後】

池上:右の結果、橋本 じょう君を衆議院規則第18条第2公により、本院において内閣総理大臣に指名することに決まりました。


【所信表明演説】

橋本:数年前、政治に全く興味の無かった男が、今日こうして内閣総理大臣として立っています。

橋本:日本を変えたい。その思いをもって国政に取り組み、皆さんから頂いた信任を背に

橋本:より心躍る方へ、舵取りをしていく所存であります。


【END】


【あとがき】

作者:いかがでしたでしょうか?少しは政治に興味を持って頂けましたか?

作者:え?そんなものになるとは到底思えない?

作者:いや、あなたの一票があれば変えることが出来るかもしれませんよ?

作者:国から与えられた投票権なのですから、しっかりと行使しましょう!

作者:ん?誰を選べば良いかわからない?

作者:それなら消去法もいいと思います。

作者:まだこの人になら任せても良いかな?と思える人へ入れても良いと思うのです。

作者:そうしないと、あなたと全く違う思想を持った人が国政に送り込まれてしまいますよ?

作者:投票行ってみようかな、そんな些細なきっかけにこの小説がなれば幸いです。

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