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@utau54
第1話 【ダンジョン】とは
比良阪市夜魅町。
都心から電車で約30分と比較的アクセスしやすいこの地には、日本で最大の【ダンジョン】と呼ばれる地下迷宮空間が広がっており、その玄関口でもある。
この地下迷宮が発見された…
いや、人類史でその存在を明確に確認されたのは今から約100年程前になる。
それはこの地のみならず世界各国でほぼ同時に出現し、大量の化物を排出し世界を混乱に陥れた。
それは地獄の始まりであった。
ある国は化物の群勢に濁流の如く流されて滅びさり
ある凍土は灼熱の獣に焼き押し潰され蒸発し、永久焦土と成り果て。
ある森林は生命の楽園の園から生命絶え終ぐ不浄の園な塗り替えられた。
まるで絵物語のように。
竜は空を舞い覆い。
鬼は地を跳梁跋扈し。
悪魔が人を騙し拐かす。
常識を打ち破る様に。
非常識な化物どもが非常識の力を持って
街を焼き、人を蹂躙し、空を侵し、世界を穢す。
結果、全人類総人口の約半数が虐殺されたこの出来事は【死の軍進】と呼ばれ歴史に名を刻んだ。
こうして人類は突如現れた【敵】との長き戦いを強いられることになる。
数多の犠牲を出しながらも、いくつか判明したことがある。
ダンジョン内は各国ごとに規模や性質にやや違いがあるが、その名の通り複雑な地形を構成し地下深くに時空空間岩盤無視する様に広がっていた。
地上においての生物学的知識なぞ意もしないとばかりの摩訶不思議構造生命体が産まれ落ち、不可解な植物が育ち、未知の鉱物が生成される。
不条理極まる独自の生態系を構築していた。
まさに異世界と呼ぶべき空間が形成されていたのだ。
そしてもう一つ大きな特徴的なのは【異能力】
これはダンジョン入った生物は異能力と呼ばれる力に目覚めた。
これは人のみならず『適性』さえあれば、ある程度の知能がある生命体に等しく与えられた。
火を操り、水を生成し、空を飛び、姿を変える…
千差万別多岐に渡るそれはやがて【贈物】と呼ばれ、人類に数多の恩寵と厄災を与えた。
これは劇的に世界を塗り替える力でもあった。
これまで防戦一方であった戦況は覆り、人類は一転、攻勢に出る。
異能には異能を。
なりふり構ってなどいられない人類は藁にも縋る思いでそれらを解析し、実践した。
ありとあらゆる人体実験を行使し犠牲者をも多く出したが、それでも人類は諦めなかった。
もはや進み続ける事しか生き残る道は残されていなかったのだ。
それが奴らと同じ人ならざる者になろうとしても。
濁流の如き群勢を津波の如く覆い沈め。
烈火灼熱の獣を溶けぬ巨大な氷塊で圧殺し。
生命絶え終ぐ不浄の園は清浄なる焔で浄化した。
数多の死闘を乗り越え、
こうして【死の進軍】から20年、遂に溢れ出た化物どもを一掃したのである。
だが元凶たるダンジョンが消えたわけではない。
定期的に地上に上がってくる化物達。
今後またあの大規模侵攻が起こり得ること。
各国は対策を迫られた。
しかし迷宮から与えられたもの恐怖だけではなかった。
医学界を激震する薬草、文明を飛躍的に革新させたレアメタル、甘美な食材達…
世界を魅了するそれがそこには在ったのだ。
これに目を付けない訳がなく、以降世界各国はダンジョンの管理、監視、探索が推進されて行った。
それ故にダンジョンの利益の奪い合いで各国の醜い争いもあるのだが長くなるのでここでは割愛しておこう。
だってこれは
ダンジョンが出現して約100年後の未来。
異常が当たり前となった世界。
「あの!てんちょーさん!」
今や観光地となったその場で繰り広げられる
迷宮玄関口夜魅町の老舗食事処【ことぶき亭】で起こる
「ここで働かせてください!!」
「はぁ?」
店主とバイトの少女の物語なのだから。
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