第20話

"ああっ、痛い!" 亮平は背もたれに体を打ち付けながら息を吹き出した。早苗が車を運転している間、彼は助手席で苦痛に身をよじっていた。


"耐えて亮平!もうすぐ病院だから、頑張って!" 早苗の声は強い、そしてなんとなく落ち着いていた。彼女自身は何度も深呼吸をして、亮平の手を握りしめて励ました。


やがて、彼らが病院の入り口に到着した。助手席から降りると、亮平は膝がガクガクと震えていた。しかし、早苗の支えを借りて、彼はなんとか立つことができた。


"ここからは私たちだけじゃない、亮平。看護師さんや医師さんたちが手伝ってくれるから、大丈夫。頑張ろうね。"


亮平は頷き、深呼吸をして自分自身を落ち着けた。そして、早苗と一緒に、彼らは病院のドアを通って中へと入っていった。


早苗が美咲に急いで電話をかけた。


「美咲、大変よ!亮平のおへそから羊水が出てきた。今、私たち、病院についたところよ。早く来て、お願い!」早苗の声は焦っていた。


美咲は電話を受けた瞬間、一瞬で身を起こした。「う、うん、分かった。すぐに行くから!」


美咲は速やかに家を出て、最寄りのバス停に向かった。乗り換えながらも一直線に病院に向かった。彼女の心は、亮平と早苗、そして産まれようとしている赤ちゃんのことでいっぱいだった。


病院に着いた美咲は、レセプションで亮平と早苗の部屋を尋ねた。そして、急ぎ足で彼らのいる部屋へと向かった。部屋の扉を開けると、そこには亮平が激しい痛みに耐え、早苗が優しく彼を励ましている光景が広がっていた。


「美咲、ありがとう。来てくれて。」早苗は美咲に感謝の微笑みを浮かべた。


「当たり前だよ。一緒に頑張ろうね、亮平。」美咲は亮平の手を握り、力強く告げた。そして、それぞれが支えあい、新しい命の誕生を待ち続けた。

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