第17話
お腹が張ってはち切れそうな感じになったとき、亮平は新たな課題に直面した。彼のお腹は張り詰めたバルーンのように感じられ、肌が限界まで引き伸ばされているかのようだった。
彼は立ち上がるたび、座るたび、さらには歩くたびに、皮膚が裂けるのではないかという感覚に苦しんだ。肌は乾燥してパリパリになり、細かいひび割れが見え始めた。彼は無意識のうちにお腹を撫で、まるでそれが何かの慰めになるかのように。
この時期には、肌の伸びきった部分に痒みが出ることもよくあり、それはさらなる不快感を亮平にもたらした。彼は何度も深呼吸をして、張りと痒みに耐えるための平静を保とうとした。
彼がこの不快感に対処する一つの方法は、肌を保湿することだった。ボディローションやオイルをたっぷりとお腹に塗り込むことで、皮膚の柔軟性を保ち、伸びる皮膚に潤いを与えることができた。
臨月に突入した亮平は、新たな症状に戸惑うこととなった。逆に、赤ちゃんの存在はより身近に感じられ、動きや反応はより明瞭になった。特に寝ているとき、赤ちゃんが動き回るたびにお腹が揺れ、それが感じられるのは不思議な体験だった。
しかし、それと同時に、亮平は新たな不快感にも直面した。腰痛が慢性化し、何をするにも痛みが伴うようになった。寝返りを打つだけでも、一苦労だった。
また、尿意を感じる頻度が増え、夜中に何度もトイレに起きることが多くなった。亮平の睡眠は断片的なものになり、疲労は日に日に増していった。
食事もまた問題だった。胃が圧迫されて食欲が落ち、一度に多くを食べることが難しくなった。代わりに、小さい量を何度も食べることが必要となった。
最後に、亮平の動きは大幅に制限され、外出も困難になった。歩く速度はゆっくりとしたものになり、長距離を歩くことはほぼ不可能だった。
しかし、亮平は全ての困難を乗り越え、育児嚢にいる我が子との絆を深めることに尽力した。だからこそ、彼は臨月の全ての挑戦を受け入れ、自分が経験しているすべてを愛おしく思うことができたのだ。
「ああ、早苗、女の人ってこんな経験するんだね!?」亮平は小さな笑顔を浮かべつつ、自分の腫れ上がったお腹を見つめた。
早苗は優しく微笑んだ。「それが妊娠するということよ、亮平。痛みや不便さ、それは全て赤ちゃんの一部。だからこそ、この期間がとても特別なのよ。」
亮平は目を閉じ、赤ちゃんの動きを感じた。「特別だなんて、言葉では表現しきれないほどだよ。僕がこんな体験をするなんて、夢にも思わなかった。」
早苗は亮平の手を握り、優しく言った。「でも、それが僕たちの赤ちゃんのためなら、価値があるんじゃない?」
亮平は頷いた。「その通りだ、早苗。それに、この経験は僕たちの間柄を深めるんだと思う。男性として妊娠するなんていう体験は、多くの人には理解できないだろうけど、僕はそれを愛おしく思っているよ。」
ふたりはお互いを見つめ、誓いのように頷いた。これからの出産、そして新しい家族との生活に対する期待感と喜びでいっぱいだった。
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