第16話

亮平の日常は、妊娠という全く新しい体験によって、大きく変化していった。お腹が大きくなるにつれ、動きが鈍くなり、一歩一歩を慎重に踏み出すようになった。また、腰痛や股関節の痛みにも見舞われるようになり、それは赤ちゃんが骨盤の中に下がってきて神経を圧迫するからだった。


お腹が大きくなるにつれて、育児嚢はみぞおちあたりまで上がってくる。これにより、亮平は食事量が減り、胸焼けを経験したり、呼吸がしにくく感じることもあった。特に横になるときや階段を上がるときは、呼吸が特に難しくなり、いかに普段の生活が当たり前であるかを思い知らされた。


さらに、膀胱が圧迫されることでトイレの回数が増え、亮平は一晩に何度もトイレに起きるようになった。それはたとえ就寝中でも、ちょっとしたくしゃみや笑いで尿漏れが起こりやすくなるという新たな問題をもたらした。


これらすべての変化は、彼にとって未経験のことであり、調整するのは困難であった。しかし、それらはすべて新しい生命を宿すことによるものであり、それは彼が覚悟していたことでもあった。彼の心と体は、それぞれの課題を乗り越えることで強くなっていき、その経験は亮平を新たな人生へと導いていった。


亮平は妊娠後期に突入すると、眠りが浅くなった。体重の増加やお腹の膨らみ、そして頻繁に起きるトイレの必要性により、一晩中快眠することが難しくなった。


亮平は通常どおりの姿勢で寝ることができず、寝返りも一苦労だった。左側を向いて寝ることが推奨され、それは胎児への血流を最適化するためだ。しかし、これに慣れるのはなかなか難しかった。


また、胎動が活発になり、赤ちゃんがふくらはぎを蹴ったり、リズミカルに腹壁を叩いたりするたびに、彼は目を覚ました。亮平は、これらの動きが赤ちゃんの健康な兆候であることを知ってはいたものの、それが連続的な睡眠を阻害すると、疲労感が増す一方だった。


夜中に何度も目覚めること、そして日中の疲労感は、彼にさらなるストレスをもたらした。それでも、これが父親になるという事実とその喜びを彼に思い出させ、これらの小さな困難を耐え忍ぶ勇気を与えてくれた。

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