第14話
早苗は、部屋に一人でいると自分を責め始める。 "もし私が胎盤剥離を起こさなければ、亮平はこんな思いをしなくて済んだのに。" 彼女は悲しみのあまり枕を抱きしめ、ベッドは涙で湿っていく。
そこにドアのノックが響く。心地良い香りとともにドアが開き、亮平がケーキを手に部屋に入ってくる。
"早苗、ごめんね。今のは間違ってた。お前のせいじゃないんだ。僕が自分の選択を理解できてなかっただけさ。" 亮平はそっとケーキをベッドの隅に置き、早苗の涙をゆっくりと拭き始める。
"おっ、早苗見てみて!"亮平はベッドに座ると、上着を少しまくり上げてお腹をさすった。その時、亮平のおへその周りがふっと動くのが見えた。それは小さな命、彼らの赤ちゃんが蹴っているのだ。
"あ、見えたね!"早苗は驚いて目を輝かせる。その瞬間、ふたりの間に流れていた緊張が消え、笑顔が満ちた。"赤ちゃん、お父さんが頑張るからね。"亮平はお腹に話しかける。
この瞬間、亮平は自分の決断を後悔していないと確信した。自分が育児を担当し、仕事を離れることで、このような貴重な瞬間を経験できるのだから。そして早苗も、亮平が一緒にいてくれることに安堵した。ふたりは手を握り合い、これからの生活に希望を持った。
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