第13話
亮平と早苗は夕食後、静かなリビングルームで向かい合わせて座った。
"早苗、社長と話したんだけど、" 亮平は慎重に言葉を選びながら話し始める。 "育児休暇を取ると、出世のチャンスや今のプロジェクトは全て他の人の手に渡ることになると言われたよ。"
早苗はしばらく沈黙し、その後ゆっくりと "亮平、それは大変な決断を迫られるね。でも、今は私たちの赤ちゃんが最優先なんじゃないかな。" と静かに答える。
"うん、それは分かっているんだ。でも、自分のキャリアを全て放棄することになるかもしれない...それが怖いんだよ。" 亮平は率直に自分の不安を打ち明ける。
早苗は少し考えた後、ゆっくりと言葉を紡ぐ。 "私たちが決めたのは、あなたがキャリアを捨てることではなくて、今、この瞬間に何が一番大切かを選ぶことよ。将来のことは、将来考えればいい。今、私たちができることを一生懸命やろうよ。"
"でも君はいいよな、" 亮平は苦しみに満ちた声で言う。"でも僕がなんでこうなったのか考えてみてよ。"
彼の言葉に、早苗の表情は驚きと傷つきに満ちていた。彼女は亮平を見つめ、ゆっくりと涙が頬を伝い始める。言葉を発することなく、彼女はゆっくりと立ち上がり、部屋を去って行った。残された亮平は、言葉を後悔しつつも、何を言えばいいのかわからずただ黙って座っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます