第12話

「亮平、理解してもらいたいんだけど、この会社は結果を出している人にチャンスが回ってくるんだ。お前が育児休暇を取るということは、出世のチャンスや今のプロジェクトは全て他の人の手に渡ることになる。」社長は淡々と告げた。


一時の静寂の後、亮平は「はい、分かりました。」と淡々と返す。しかし、頭の中では何百もの思考が渦巻いていた。


帰宅後、亮平は一人リビングに座り込み、自分が選んだこの道について深く考え込んでしまった。自分がこれまで積み上げてきたキャリア、その一切が育児のために一旦ストップする。自分がタツノオトシゴのおへそをつけた意義、それが自分の人生、特に仕事にどのような影響を及ぼすのか。考えるほどに、彼は深い混乱に陥っていった。


「でも、私たちの子供のために、私が今一番やるべきことはこれだよね?」彼は独り言のようにつぶやいた。大切な仕事と、まだ見ぬ我が子。どちらを選ぶべきかの答えは明らかだった。しかし、その選択が彼にとってどれほどの重みをもたらすかを、亮平は今更ながらに痛感していた。

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