第6話

亮平は、美咲からタツノオトシゴのおへその提案を受けた時、ほんの一瞬だけ混乱した。その混乱は彼の眼差しから見て取れた。何か言葉を発そうとして、それが出てこないような状態だった。彼は自分の膝を見つめ、深く息を吸った。


「ふう、それはすごい発明だね、美咲。でも、それが僕に必要かどうかはわからないな…」亮平はこう言った。彼の声は不確かだったが、彼の表情からは決意が感じられた。


亮平は部屋から出て行って、しばらくの間姿を見せなかった。


彼の心は混乱と驚きでいっぱいだった。こんなことを考えるなんて、まさかという感覚が彼を包み込んだ。自分が男でありながら、子供を身ごもるなんて。それが現実のものとなりつつあるとは。


彼は自問自答を繰り返した。なぜ自分がこんな決断を迫られなければならないのか、自分が子供を育てるという新しい役割を果たせるのか、早苗や子供たちに対して負うべき責任を果たせるのか。それとも、ただ恐怖に駆られて逃げ出すべきなのか。


彼は長い時間を過ごしながら、自分自身と向き合い続けた。それは彼が今までに経験したことのないほどの困難な問いかけだった。しかし、彼は心の奥底で、自分が早苗や子供たちを守ることを望んでいることを確認した。それが彼にとっての愛だと、彼は確信した。


亮平は深呼吸をして、再び部屋に戻ることを決心した。彼の心はまだ不安でいっぱいだったが、彼は自分がこの挑戦を受け入れることを決めた。それは彼にとっても、彼の家族にとっても、最善の選択だと信じて。


それから数時間後、亮平は再び部屋に入ってきた。彼の顔色は少し青白く、明らかに何かを考え続けている様子だった。しかし、その目は確かな意志に満ちていた。


「美咲、それをやってみるよ。これは自分の子供たちにとって最善の選択だと思う。そして、それが僕にとっても最善の選択だと思う。」彼はそう宣言した。


美咲はホッとしたような、しかしまた新たな不安を覚えるような表情を見せた。それでも、亮平のその決意を尊重し、共に歩む道を選ぶことを約束した。

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