第7話

美咲が「タツノオトシゴのおへそ」を亮平に差し出すと、亮平は困惑した顔をして言った。「本当にこれで大丈夫なんだろうか、美咲?」


美咲はにっこりと笑いながら頷いた。「大丈夫だよ、信じて。」


タツノオトシゴのおへその装置は非常に独特なものだった。それは小さなシリコン製のデバイスで、外観は人間のへそのような形状をしていた。一方で、内部には複雑な機能が備わっていた。その装置は人間の体温に反応し、体温と一致すると自動的に活性化するという、先端技術を駆使したものだった。


亮平がその装置を自身のへそにピッタリはめ込んだとき、彼はちょっとしたくすぐったさを感じた。その感触は初めての経験だったから、彼はびっくりして、思わず腹筋を締めた。


すると、装置は亮平のへその温度と一致して活性化し始めた。その過程で、装置は体温に反応して軽く膨らみ、亮平のへそにピッタリと収まるように形を変えた。装置が活性化すると、それは亮平のへそ周辺の皮膚と一体化し、完全に自然な一部のように見えた。



亮平は深呼吸をして、美咲が手渡した小さな装置を自分のおへそに取り付ける。すると、その装置は完全におへその中に吸い込まれていく。亮平は驚いた表情を浮かべながら言った。「なんだ、ちょっとくすぐったいけど、全然痛くないぞ。」


「だから言ったでしょ。」美咲はにっこりと笑っている。


そして、装置が亮平の体にフィットしたとき、それは次第に育児嚢へと変化していった。装置は皮膚の下にある筋肉や脂肪組織に浸透し、その中に新たな空間を作り出した。その空間は亮平のおへそを中心に広がり、時間と共に徐々に大きくなっていった。


そして、一時間後、亮平のおへその周りには少しずつ膨らみが見え始める。それはまるで、タツノオトシゴのオスが子供を育てるために用意する育児嚢のように見える。


「美咲、見てみて、これが僕の...タツノオトシゴのおへそだよ!」亮平は笑顔で美咲に報告する。


美咲は嬉しそうに頷き、亮平のお腹を見つめながら言った。「すごいね、お兄ちゃん。これからが楽しみだね。」


これが、亮平がタツノオトシゴのおへそを体験する最初のステップだった。彼自身がまさか自分がこんな経験をすることになるとは思ってもみなかったが、それは彼の人生における新たな節目となったのだ。

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