第5話

亮平には一人の妹がいた。それが、美咲だった。


美咲は、胎盤剥離の知らせを亮平から電話で聞いた。その時、美咲は右手に電話、左手に猫というなんとも器用な姿で電話を聞いていた。


美咲はネコを抱きながら亮平に向かって、言った。「亮平、タツノオトシゴのおへそという新しい装置を作ったんだ。それはおへそに付けるだけで、男性も赤ちゃんを育てられるようになるんだよ」


亮平は驚きのあまり、一瞬美咲の言葉が理解できなかった。「おへそで...育てる?何を言っているんだ、美咲?」


美咲は猫をソファーに下ろし、しっかりと亮平の目を見つめた。「ちょっと不思議な話かもしれないけど、それは可能なんだ。赤ちゃんはお腹の中で育つように作られているから、おへその下に育児嚢を作ることができれば、お腹の中と同じような環境を作ることができるの」


亮平は思わず苦笑いをした。「それがどうしたんだ?私がおへそで子供を育てるなんて、そんな馬鹿げたことができるわけないだろ?」


美咲は静かに彼を見つめ続けた。「でも、それが今、君の子供の生存率を上げる唯一の手段かもしれないんだよ」


亮平の表情が硬くなる。彼はしばらく何も言わず、ただじっとスマホを片手に下を見ていた。その瞳には不安と困惑が混ざり合い、とても深い感情が湧き上がっていた。

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