第4話
「それじゃ、事件の完全解明と洒落こもう!」
調子よく真はそう言った。何でこんなにテンションが高いのか、いつも疑問に思う。元気なのはよろしいけど、ここは雰囲気がウリのカフェだ。静かにしてほしい。
「アタシもちゃんと調べてきたんだよ。大変だったんだから」
「報告する雇い主はいないけどね」
「でも記録には残すんでしょ?」
「そうね。必要な情報になるから」
「まっ、期待以上の戦果を持ってきたつもりだよ。人脈地位お金、使えるものをフルに使ってね」
そう言いながら真は机の上にファイルの中身を陳列し始める。写真や走り書きみたいなメモ、文書。
「そんじゃまずこっちから」と、言って真は古そうな紙の写真を出す。
「儀式の中心に据えられていたものを片っ端から調べたんだよね」
そう前置きをしてから真は話し出す。
当然、いつも通り長々と過程からだ。
「宴会って言っても、あの場には主役がいなかった。そうだろ?」
「ええ、そうね。主役不在の宴会。というより、主役を呼び出すための宴会」
「ヒトならざるモノを呼び、温床にして己をヒトでない者に昇華させる。そういう術であることは間違いない……よね」
「そうね。あの場に完全な妖怪はいない。でも結界内には妖怪の存在が必要な術だったから、逆に代替となる妖怪が生み出される装置になったというわけね」
「そ。不完全な妖怪が彼女を起点に寄り集まって、形を得ようとしたというワケだね」
「不完全な妖怪って、ここでは何になるのよ。それっぽいのいなかったじゃない」
「いいや、いたさ。腕、爪、角……いっぱい転がっていただろう」
「あれはただの恐竜とか、古代生物の一部じゃない」
「いいや。違うね。確かにアタシらからすればそうだけど、昔はそんなことを考えるような奴はいなかったんだ。今でも天狗の爪、と名付けられた鮫の歯の化石がどっかの寺に寄進されてるぜ」
なるほど。確かに失念していたことだ。それで蓮台自然史博物館が舞台として選ばれたわけか。ああいう場所であれば死も、遺物も、存分に集めることができる。
真は軽くウインクしながら話を続けた。
「とりあえずはこんな感じじゃない? 動機は不明だけど」
「ヒトを辞めたいだなんて、ロクな動機じゃないわ。知らなくてもいい。記録には必要ない……こともないけど、今回は関係なさそうだし」
「そうなのねー。んでまぁ、人が帰ってこないってのは普通に飲み込んでいたからでしょ。これで完全解決ってワケ。残念なのは首謀者が死んでいることかな?」
「別に残念じゃないわよ。被害者には申し訳ないけど、それは私の仕事じゃないし」
「それもそう! 致し方あるまいて」
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