第九章 エピローグ
第136話皇帝万歳!
献帝は、劉備に皇帝の座を譲ろうとした。
「皇帝という地位は、そのときそのときで一番力があるものがなれば良いのです。そして朕にはその力はありません。実力のない覇者は打倒されるべきなのです」
そう献帝は言ったが、劉備は固辞する。
もちろん古礼に則ったフリであり、関羽・張飛・趙雲・孔明を初めとした重臣たちが説得のフリを見せて、三度目に劉備は
「皆が云うのであれば、徳のない身であるがしょうがあるまい」
と、さっさと皇帝に即位することにした。
「陛下、西の羅馬という国から使者がお目通りを願っておりまする」
「ふむ、羅馬とな」
劉備は老境である。
公務を行うのも、蜀で娶った
公務と言ってもやることは少ない。
権力が劉備の実質支配下にないからだ。
野望に満ちた若年期の割には、穏やかな余生を送っているとも云える。
「ほう、羅馬から使いが来たか!」
壮年期を迎えた劉操が応える。
「西への道は確かに出来たのであるな!」
劉操は中華を分割した。
今のところは中央集権で各地に兵権のない王がいる状態だ。
もし王が対異民族以外の兵を持とうとしたら、途端に中央から軍が派遣されて討たれる。
あまり以前の国家と変わらない。
だが、劉操は政治の実権を握る王ではなく、民を育てようとした。
衣食足りて礼節を知る。
そして礼節がなぜ尊ばれるようになるのか、民が自力でそこまで考えを及ぼすように考えさせる。
そのときに民は政治というものの在りかたを知るであろう。
ここまでもあまり以前の歴史と変わらないかもしれない。
しかし多種多様な考えを持つことによって中華は発展してきた。
儒教に染まり切っていない自分ひとりにだけ考えを押し付けるのは卑怯である、と劉操は卑怯にも棚に上げて叫ぶであろう。
『多種多様な考えをもっと実際に知りたい!』
劉操はそう考えるようになっていった。
「ほう、羅馬帝国とはそんなところであるか!」
劉操は生まれ変わる前の知識に、日本以外の記憶を持っていない。
おそらく海外旅行をしたことはなかったのであろう。
――今、世界史で習っただけのローマ帝国を
劉操の知識欲は年を重ねるごとに増していった。
「陛下、父上。実はお話が……」
「ならん」
象徴皇帝となった後の劉備は、
「他の功臣たちも次期皇帝が居なくなると混乱する。少なくとも、わしの眼が黒いうちは、な」
「劉融は利口でありまする」
そう言って、劉操は下がった。
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