第134話魏 その3
「大王さま、ご気分はいかがでございまする」
「おう、今日のところは気分が良い」
曹操は幾分か顔色が良くなってきた。
「大王さま、一度
「華佗!その名は知っている。天下の名医と名高い人物じゃな」
「はい、彼の手にかかり、治らない病人は居ないとのこと。臓を患い腹中を腐らした重病人も、
「そんな荒療治をいたすのか!」
「しかし二十日も経てば皆元気になるそうであります」
「ふむう。侍医の薬だけでは心もとない。よし、その華佗を呼べ!」
「おう、そちが華佗か。天下の名医だそうだな」
「ありがたきお言葉」
「実はのう、この頃頭が痛み、酷いときは飲食もできなくなる。この病気なんと診たてる?」
「脳に病巣がありまするな」
「なにっ、脳にだと!?」
「はい、それゆえ薬だけでは病に効果はありませぬ」
「すると不治の病か」
「いえ、麻肺湯を飲んで昏倒し、脳袋を切り裂き病巣を取り除くのであります」
「それで治るか」
「十中八九は治りまする」
「それでは十中の一はどうなる」
「おそれながらご命数とお諦め下さいませ」
「なんと命数だから諦めろと申すか!藪医者め、余の命をなんだと思っておる!」
「あえて謙遜して申したまでで、私には自信がございまする。幾千もの戦場を駆け抜けた曹王ともお方がそれくらいで怖気なさいまするか!?」
「な、なんだと!?」
「少し頭を切り開くくらいのご器量で、よく一時は天下の3分の2も切り取ったものだと挑発しているのであります」
「むむっ……」
「これから先、劉家にとられた分を取り戻すには大王のご寿命が肝心。その悩みを取り除いて差し上げようと述べているのに、何を怖がってらっしゃいます!」
「う、ぐっ……」
曹操は麻肺湯を呑むことを決意した。
「よろしいかな。麻肺湯を呑むと昏倒いたしまする。何があっても驚きませぬように……」
時が経ち、手術室から華佗が出て来た。
「成功です。しばらくすれば大王は目を覚ますでしょう。それでは私はこれにて……」
しかし、曹操は一向に目を覚まさない。
「曹丕さま、どうやらあの華佗はニセモノで、劉操配下の
「グヌヌヌヌ……!!!」
一世の英雄、曹操は藪医者の手に掛かり、命を落とした。
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