第128話益州攻略 その3

 劉操は益州へと遠征を開始した。

 表向きは蜀を苦しめる漢中の張魯を討伐するため。裏では蜀を一気に攻略し、荊州と益州を併せ持ち華北の曹魏に対する一大帝国を築くため。

 東の孫呉は大混乱に陥っており、もう立ち直ることは君主が孫権である限りないであろう。

 龍与傷槍と龍奪命剣をとことん馬鹿にされた趙雲が頂点に立っている感じだ。


 先陣に酒を呑んでいない張飛を配置し、龐統を軍師、徐庶を副軍師とし、劉操の周りは魏延、黄忠で固め後陣は呉から降ってきたばかりの呂蒙と陸遜を配置する。

 正直、呂蒙と陸遜がその気になれば後ろから劉操を襲える。

 しかし、これを意気込みに感じたふたりは劉操への忠誠をより厚いものとした。




 劉璋は『国を乗っ取られる!』と諫言した忠臣たちの言葉に耳を貸さず、涪城ふじょうまで劉操を出迎えた。


「いやあ嗣徳どの、お待ち申しておりました」

「はるばるお出迎えありがとうございます」


「さあさあ、まずは一献」

 そう言って劉璋はみずから案内を買って出て、劉操を宴席へと招いた。


 ふたりは同族ということもあり、和気あいあいと酒を酌み交わし語り合った。


 劉操がかわやへ立ったそのときである。

 龐統と徐庶が神妙な面持ちで劉操の元へとやってきた。

「若。張松から『この刻を外すな』と密書が参りました。『この機を失わず事を計れ』と……」

「あるいは玄徳さまの名に傷が付くかもしれませんが大義のためです、しょうがありません。遠回りをなさいますな……」

 ふたりは懸命の説得を劉操に開始する。






よし、やりたまえ!」

 劉操は間髪入れずに言ったので、逆にふたりは驚いた。

「い、いいのですか?玄徳さまならば遠回りをするところですが……」

「劉玄徳さまの義侠の名前に傷が付くかもしれませんが……」




「フゥーハハハ!父上の虚構が入り混じった名声など私の知ったことか!劉家はどうせ卑怯者と呼ばれておる。そこに血が一滴混じったところで何のことがあろう!」

 徹底したマキャベリストと化した劉操はそう言って、蜀を制圧することを開始した。

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