第118話二人の距離の概算 その6
「なんと、操と呉候の妹君を結婚させる、と」
「さようです。この結婚が整えば両国の平和は約束されたようなもの。呉の重臣に反対するものは居りませなんだ」
「ふむう」
「この話、両国の平和のためにぜひ実現させたい。実は妹君はもうすでに気が焦り、呉を出発し荊州に向かっておりまする。妹君は武芸の好きなお方で自分でもつねに
「この話はあなたのお考えですか、それとも周提督の……」
「とんでもない!こんな話、呉候の名が無くて周提督が独断でなんでできましょう」
「ふむう」
劉備は一考し、
「操、そして重臣とも相談しゆっくり考えて答えさせていただきます」
「さきほど述べたように、妹君はすでに呉を出発されております。妹君に恥をかかせないように良い返事をお待ちしております」
「この話を諸侯はどう思う」
そう言って劉備は会議を開始した。
「私は賛成でございます。呉になにか策があるのかわかりませぬが……私が
孔明がそう言う。
しかし、孔明の占いを信じる者は劉備一行ではもはや少ない。
「実は……」
劉操が言いにくそうに言った。
「この前、呉へ参ったおりに、その孫仲謀の妹と約束してしまいました。妻として貰う、と。私と孔明が無事であったのはその妹君の力が非常に大きい。断ることなどもはやできません」
全員の目が孔明に向かう。
実は孔明は自力で呉から脱出していたと吹聴してきたような感じであったのだ。
『なにが私の易では大吉、だ』
『ガッチリと弱みを握られているじゃないか』
『うちの軍師は胡散臭い』
全員、特に処刑されそうになった関羽は再び孔明の力を疑った。
「ここは策に乗ったふりをしてかえって我が策となすところでしょう。速やかにお引き受けなされれば両国の衝突は避けられます」
全員の視線を感じた孔明は、努めて冷静に軍師らしく劉備に進言した。
「そういうことであればこの話受けねばなるまい。操、それでよいな」
「はっ」
「さあ、我らは華燭の典の準備をするのだ!」
孔明は劉家のナンバー3として全員にそう命じた。
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