第109話荊州攻略

 呉軍は夷陵いりょうの城をひとつすら取ることができず、魏軍との戦いで停滞している。

 そこで劉備一行は、本格的に荊州攻略を始めることにした。




「昔は最期まで私を信じてくれた劉景升けいしょう(劉表)を思って荊州を得ることが出来なかった。だが、今は違う。我が一族、我が家系のためにも拠るべき土地を持たねばならぬ。事情が大きく変わってしまった」

 張飛に脅されて一度は荊州を奪うことを決意したがなにかひっかかるものがあるのだろう。

 劉備はそうみんなの前で決意表明し、荊州攻略を宣言した。


「北は私に任せては頂けませんか」

 関羽がこの前の失敗を取り返そうと言い張った。

「汚名挽回したいのです」

――汚名は返上するものだ、と劉操は思ったけれどもまたもや言わなかった。


「関羽だけに重荷を背負わせるわけにはいかん。私も関羽の背負っている荷物を半分持ってやりたい」

 劉備が言った。

「それでは私も雲長どのに付いていくことにしましょう。良いですか、嗣徳さま」

 徐庶が声を上げた。

「わかった。徐庶、そなたは私の数少ない直々の配下だ。決して無理をするんじゃないぞ」

 それを聴くと徐庶は劉操に向かって拱手した。


「殿、元直、ありがとうございます。私には秘策がありますから3人で北を落とすことにしましょう」

――まーた猫の計を使うつもりだな、と劉操は直感した。




「それでは嗣徳さまを総大将とし、私、張飛、趙雲とで南を落とすことにしましょう」

 孔明が言った。

「孔明、操が総大将で大丈夫なのか」

 心配そうに劉備が言った。

「嗣徳さまはかなりの能力を持っておられると私は踏んでおります。しかし悲しいかな、名声がそれに伴っておりません。劉家の2代目としてここらで場数を踏むのも悪くはない考えだと私は思っております」

 その孔明の答えに劉備は

「そうであるか」

 とひとこと呟いて劉操を値踏みするかのようにジロジロと直視した。




「ふふふ、珍しい面々に別れたな」

 劉操はそう言って笑った。

 戦乱の世での大将としての劉操の一歩がついに始まろうとしている。




 こうして劉操は孔明・張飛・趙雲を引き連れ零陵・桂陽・武陵・長沙の荊州4郡を劉備軍の総大将として攻め落とすこととなった。

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