第106話曹操敗走 その4
「やはり劉備は余の目から見ると能がない。今回の敗戦は周瑜だけを見誤った過ちであった。この辺に伏兵を置いておけば我らは降参の他にはなかった。劉備はやはり頭のめぐりが悪い」
曹操がそう言うとそこへ一本の矢が飛んできた。
それは赤兎馬に乗った関羽の軍であった。
「げえっ、関羽!」
『ひーっ』
『関羽だ』
『顔良を斬った関羽だ』
『丞相でさえ一目置かれていた関羽だ』
曹操一行の士気は、どん底まで落ちた。
「ええい、こうなれば最後の決戦だ!」
「丞相とても戦にはなりませぬ。残念ながら部下はもう立つ気力すらありません」
曹操があたりを見回すともはや立っている兵士はほとんどいなかった。
「丞相、関羽は
「そんなことはいわれなくても余が一番よくわかっている」
「かつて丞相は関羽の条件をすべてのみ、降伏を許されました。関羽とてその恩は忘れてはございますまい。ここは関羽に頼み、見逃してもらってはどうですか……」
「ふむう」
曹操は一考し、
「よし、話し合ってみよう」
と一騎で関羽の前に赴いた。
「関羽、久しぶりだのう」
「曹公、お久しぶりでございます」
関羽は馬上で一礼した。
「本来ならば昔の思い出話でも語るところでございますが、今日は我が軍師・諸葛孔明の命により曹公を待ち受けていました」
「ほう、諸葛孔明という軍師が劉備に……」
「いさぎよくそれがしにお
「おまえの役目は重々承知している。戦に敗れ命を落とすのも覚悟の上。だが英雄の
「たしかにご恩は受けましたが、その恩は白馬の陣で顔良を討って報いたと存じます」
「そこを曲げて天下の丞相が頼むのだ、なんとか考え直してくれぬか」
「最後に言ったはずです。次に会うときは敵である、と」
「しかしな、関羽よ……」
「問答無用!」
その言葉を合図に関羽は曹操目がけて襲い掛かった。
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